明治幻想奇譚 不死篇 不死団の章
藤巻舎人
第1話 不老不死探偵の助手 其の壱
さてさてさて、みなさんこんにちは。
お久しぶりです、初めまして。
時は明治、場所は日本皇国の東京、神保町の片隅にある骨董屋に居候してるっす。
ここの主は
で、おれは探偵の助手をしてる訳です!
しかも師匠のトキジクさんは、ただの探偵じゃないんですよ。
ななななんと。
「不老不死探偵なんです! 中身は駄目男なんですけどね!」
おれは探偵助手兼骨董屋の店番として、目の前のお客さんに向かって高らかにいい放った。
お客さんは一瞬驚いたように一歩後ろに下がり、目を丸くした。
しかし直ぐにその目を輝かせ、にんまりと笑みを浮かべた。
「それ、ホントか?」
お客の若い女性は、片言の日本語でいった。
どうやら志那の人らしい。
確かに格好も変わってら。
黒と赤の細かい刺繡が施された志那風の長衣。長い黒髪は一本に編んで後ろに丸く束ねている。
不老不死と聞いて俄然色めき立ってきたようだ。
いい反応、いい反応! そういうのが欲しかったんだよ!
もっと興味持って! もっと憧れて!
「ホントもホント、正真正銘の不老不死なんですから!」
「ワタシ、探してた。不死人を」
彼女は骨董屋にふらりとやってきて、「フジミの探偵、探してる」とおれに訊いてきたのだ。
「まさに、うってつけですよ、ウチの師匠が。それで、いったいどんなお仕事の依頼なんですか?」
「おい、どうした春日、お客さんか?」
突然、女性客の背後から、トキジクさんが姿を現した。
彼女はそれに驚いた様子で、もの凄い勢いで振り返った。
「なんだよ、べっぴんさんかよ。どんな用事だい?」
おれは椅子から立ち上がって、トキジクさんに説明しようとしたら、彼女はそれを制するように、声を張り上げた。
「アンタが、不死人?」
「ん?」
トキジクさんは眉をひそめた。
「アンタが、不死人か?」
執拗に繰り返す志那の女性。
「おい、春日、どういうお客な・・・」
彼女越しにトキジクさんがおれに訊いてきた瞬間、志那の女性はトキジクさんに猛然と殴りかかっていた。
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