5.
菊を部屋へと運んでいた桜文だが、中途半端に開かれた、扉の隙間から差し込む廊下の明かりばかりを頼りに。菊をベッドに寝かせると、掛け布団をかけた。
じっと、その寝顔を見つめ。
「疲れて寝ちゃうくらい、牡丹くんと何をしてたんだか……」
桜文の口から、くすりと小さな笑みが漏れる。太い指の先を使って、そっと、菊の顔に掛かっていた髪を指先で払い除けた。
深閑とした時間ばかりが流れるも、不意に、「夕飯の支度ができたよー!」と、下から芒の叫び声が聞こえ。その声を耳にすると桜文はベッドから離れ、扉の方へと移動する。
そして、「おやすみ」と。小さな音で暗闇に向かって言い残すと、音を立てないよう静かに扉を閉めた。
が。
「……によ。なによ、意気地なし……」
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