短編集不可思議な

ミステリーサークル

第1話 ヤマハゲ

ヤマノケという怪異がある。


ヤマノケとは、ある土地に住み着き山の神やもののけと言われる存在。

こういう話がある。

ある親子が、車で山道に差し掛かった際、車が動かなくなり、立ち往生していると、こんな不気味な声が聞こえてきた。


「テン...ソウ...メツ...」


黒い何かが近づいてくる。その何かは車の周囲を周り、様子を伺っている。しかし、その瞬間、子供がいきなり...


「ハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタ」


と呟き始め、近くの神社で祓ってもらうも、このヤマノケ、女性にしか取り憑かず、49日以内に祓わなければ一生取り憑くという、恐ろしい存在である。


しかし、この地方には、「ヤマハゲ」という妙な怪異がいる。

これを確かめに、私と友人二人の三人で確かめに来た。私達三人共、女である。


ヤマハゲが出るとされる山道に車を止め、待つ三人。

しばらく待ち...その時は来た...


「テン...ソウ...ハツ...」


興奮する三人...

ヤマハゲとされる白い何かが、ゆっくりと車の周りを回っている。

緊張と興奮が入り混じり、妙な緊迫感に包まれる。


そしてその瞬間...友達二人が...


「ハエタハエタハエタハエタハエタ」


と一心不乱に呟き始めた。その瞬間私は意識を失った。


意識を取り戻し、周囲を窺う。何もいない。

何かおかしい。良く見ると、私と友人の頭の髪の毛が全て無くなっていた。


「うわぁー!」


三人は絶叫し、半狂乱になるも、すぐ近くの神社に駆け込み、事情を話し住職から、ヤマハゲに関する話を聞いた。

要約すると、以下が主な特徴である。


・ヤマハゲとは、髪の毛を奪っていく怪異


・ヤマノケは、女性にしか取り付かないが、ヤマハゲは男女問わず取り憑く


・あの山道がある山は、毛増山(けましやま)と呼ばれ、ハゲを気にしていた男が過去に登頂すれば、髪の毛がたちまち増えてくるという言い伝えを真剣に信じたその男が亡くなり、後に怪異化したもの


・「テン...ソウ...ハツ...」は「転...送...髪...」のこと。髪を自分に転送、つまり奪う事を表している


・「ハエタ」と呟いている間に取り憑き、奪う


・取り憑かれても、髪を奪われるだけで害はない



事情を聞いた三人は、髪が無くなってしまった事はショックだったが、ひとまずそれ以上に害はない事から、安堵した。

そして、その帰り道にまた山道を通る。


すると案の定、エンジンが止まる。

何か嫌な気配を感じる...まさか...

でも三人は笑う。

「もう取る髪の毛も無いし、怖くもなんとも無いよねーww」

と笑い合う三人にこんな声が聞こえてきた。


「テン...ソウ...メツ...」

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