h21.04.21. caramelization




 ひとひらを指で伝う。細い息がいちど震えて

 望む色を得られぬままの アゼリアピンクがその手に揺れる。

 太陽が注ぐ銀色の雨も 窓辺に居ては音だけの話で


 髪の黒には珊瑚さんごが映る その透明さには頬だけが触れた

 摘めそうな色の小さな舌に 重なる傷の熱さばかり与え

 唇に添う菓子の欠片は 見ているだけで甘く焼きつく。


 つまづく姿が少し似合う事を 咎められるので言わないように

 シロップの如く落ちてゆく髪を ただ舌の如くすくっていた。

 流す涙を目で追うだけで 何も告げられずに肌へ託けていた。


 抱き寄せられない理由ばかり探していた。欲しい温もりばかり奪ってしまう気がして

 小さなその手の行く先や そこに握り締めるものさえ知らずにいた。


 置き換える事で解いてきたので ここにある傷が漸く痛んだ。

 笑い合う事を初めて知って 引き会わされるように苦しみを知った。

 並んで辿った空を思い出して 今はひとり繰り返していた。



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