第39話、旅立つ者へ……

 大きな夢。 小さな夢……


 人は皆、夢を見て成長する。


 しかし、あらゆる夢を具現化し、未来を自由に書き換えられるような、


 全ての倫理をも超越した『 大いなる力 』を手にした時……


 人は、人でなくなる。




 ……そう。


 夢を実現させようと目的を持ち、己自身の力で邁進しつつ、


 努力する姿こそ、美しいのだ。




 勘違いしてはいけない。 夢は、叶える為にあるのではなく、


 見る為にあるのである。




 勿論、夢が叶えられたら、それは素晴らしい事だろう。


 だが、想い描く夢を完璧に実現し、寸分違わないカタチに出来る者は


 おそらく、ごく限られた少数だ。




 しかし、想い返して欲しい。


 夢や希望に向かって突き進んだ日々は、その人にとって掛け替えのない


 日々では無かったか? 努力した結果に得たものは、想い描いていた


 夢よりも、遥かに秀逸なモノだった、と言う結果にならなかったか?




 夢とは違う『 カタチ 』を得た。


 夢とは違う、良質な知識を得た。


 努力する過程で、尊敬出来るヒトに巡り合った。


 未来を共に謳歌出来る、最愛の人に出逢った……




 価値観は、人それぞれだ。


 想い描く夢に到達出来なかった現実を、嘆く者もいる事だろう。


 それはそれで、自分を悔いるがいい。


 


 大切なのは、夢に向かう事、叶える為の行動を起こす事、それ以前に


 自身の未来を見据える事だ。 それは、個々の人生の謳歌へとつながる


 事だろう……


 夢に向かって歩む日々の努力は、夢を叶える以前に、『 人 』として


 生きる為の大切なファクターである事を、絶対に忘れてはならない。




 夢に向かう事… それこそが、人の姿である。


 夢を持つという事… それこそが、人間の証明である。




         *作品『 4429F 』 第17章、終局の封印より


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