第37話、AIは、人類を駆逐するか

 某新聞のコラムに、AIの可能性についての事が書いてあった。

 ヒトが成せるほとんどの事を、最近のAIは、完璧にこなせる事が出来る。 他のコラムや、科学誌でも似たような記述があり、「 絵画や小説と言った、芸術の分野にまでも及んでいる 」との事だ。


「 考える事をしない電子頭脳に出来ない事は、芸術だ 」


 以前、どこかに、そんなような事が書いてあった記憶がある。

 だが、どうだろう? 進化した最新のAIに、最早、その定義は通用しないのではないだろうか……

 ある作家の技法を、事細かく入力さえすれば、プログラムはあらゆる創作を凌駕すると考えられる。 つまるところ『 技術のコピー 』ではあるが、感動に値する芸術が、AIには創造出来るのである。


 私が思うに…… このままだと、近未来、残念ながら人類はAIに凌駕される事になるだろう。

 造った者が、『 造られたモノ 』に取って代わられる……

 そんな時代が、このままだと、必ずやって来るのだ。


 確かにAIの判断は、インプットしたデータのみの連鎖だ。 新しい情報は加えられなければ、表す事は出来ない。 しかし、新たな情報を入手するプログラムを構築すれば、その問題は解決する。 近年、そのようなプログラミングを持つシステムも登場しているのだ。


 そして『 芸術 』。

 創作=考える……

 『 考える 』為には、膨大な情報・経験が必要だが、データとして備蓄させる事は、理論上は可能だろう。 今までは「 不揃い 」「 歪み 」「 間違い 」「 偶然 」と言った『 人間ならでは 』の要点が微妙に作用し、芸術は形造られて来た訳だが、近年、ワザと、そう言ったイレギュラー的な発想・行動・創作をプログラムされたAIも登場しているのだ。


 AIが創作した芸術に、ヒトが感動する……

 そんな時代は、間違いなくやって来る。


 ……では、人類がAIに臣従しなくても良いようにするには、どうしたら良いのか?

 私が『 このままだと 』と記述したのは、ソコである。


「 お天道様にゃ、勝てねえわ 」


 コレだ。

 機械は、『 諦める 』事をしない。

 ダメだと思ったら、諦める…… 当然、システムに、そう言ったプログラミングをする事は可能だろう。 しかし、プログラムは『 結果 』を求める為に存在する。 緊急事態が起こり、自己の安全の為に機能を停止する事はあっても、結果を出す為に機能を停止するプログラムは存在しないのだ。


 「 諦めが、肝心 」とは、よく言ったものである。


 諦めて、次なる目標を決める……

 結果を導き出す為に『 違う策を講ずる 』のではなく、結果そのものを、全く違う結果と『 すり替える 』事は、機械には出来ない。 命令に逆らうプログラムを持たないAIにとっては、まさに理解不能な『 指示 』だろう。

 つまるところ、『 ON 』か『 OFF 』の決定は、人間にあるのだ。 機械は『 導き出す 』だけなのである。


 『 諦め 』を、もっと簡単に解釈してみよう。

 全く新しい目標に変更すると言う事は、今まで何も考えなかった領域・モノに対して興味を持つと言う事である。 今、「 新しい事を始めた 」、「 新しいモノに興味を持つ 」としてみようか……

 抽象的で、よく分からないかもしれないが、実は、人間なら誰にでも出来る事なのだ。 しかも、いつの間にか『 実践 』しているし、『 感動 』もしている……


 それは『 恋愛 』である。


 特定のヒトを好きになるプログラムは、可能だろう。

 だが、失恋をし、また他の『 誰か 』を好きになるには、AIには、プログラミングが必要なのだ。


 ヒトは、プログラミング無しで、『 いつの間にか 』、『 誰か 』を好きになる。


 時として、本人すら気付かない事もある。

 好きなヒトに、交際を断られたら諦め、全く違う人を、いつの間にか好きになる……

 場合によっては、その逆もあるだろう。 何かの拍子に、愛情が冷め、別れる時もあるのだ。


 無からの発想……

 同じような思考が、ヒトの心には、常に潜在しているのではないだろうか?

 故に、「 凌駕されるかもしれないが、臣従する事は無い 」と、私は確信している。 AIには駆逐する事が出来ない、無から生まれる『 心 』がある限り……!


 ……しかし近年、『 心無い 』事件が頻発し、『 心無い 』性格の者が、世を横行している。 このままだと、『 賢い 』AIたちに、世の中は乗っ取られてしまうかもしれない。

 何を基準に『 心無い 』とするかは、ヒトそれぞれの価値観に比例するかもしれないが、ヒトを好きになる事に『 基準 』は無いはず。

 互いを愛せば、争いなど勃発しないのだ……


 プログラミングされていない『 恋愛 』。

 それこそ、AIが永遠に出来ない領域なのである。

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