第18話、『 創作 』

 校正の合い間に、PCのドキュメントを整理していたら、娘と妻の会話を記録したファイルを見つけた。

 2点あり、今回は、その内の1点を掲載してみようと思う。

 データを確認すると、5年ほど前の記録だ。 幼稚園、年少か……



 絵本を読む事が、大好きな娘。 最近は『 創作 』にもハマっているらしく、本棚にあったテキトーな本を持って来て、それを読むフリをしながら、『 妄想 』を語る。

 以下は、夕飯の支度をしている妻との会話。


 食卓の、自分の席に座り、『 母と子の童謡全集 』を開くと、逆さまに食卓に立てて言った。

「 お母さん、最新作できたから、読んであげるね? 」

「 最新作……? そんな言葉、どこで覚えて来たの? 」

「 幼稚園だよ 」

「 …… 」

「 あーちゃんが、おうちで留守番をしていると… 」

「 ちょっ… ちょっと待って。 あーちゃんって、誰? 」

「 あのね、隣町から引っ越して来たの 」

「 …よく分からん設定だね。 まあ、いいや。 …で? 」

「 あーちゃんが叫びました。 火事だぁ~! 」

「 ナニそれ? イキナリ、火事? 」

「 間違えた。 地震だぁ~! 」

「 間違えるか、そんなモン! 」

「 だが、あーちゃんは、逃げた 」

「 『 だが 』って… 4歳児が、そんな単語使うな 」

「 すると、おばあちゃんが言いました 」

「 いきなり、おばあちゃん? 留守番してたんじゃないの? イマイチ、家族構成が読めないのも、非常~に、気になるんだけど? 」

「 ちょっと、いちいち、うるさいの! ちゃんと聞いて 」

「 はいはい 」

「 お父さんが、会社から帰って来ました 」

「(ボソッと) …また新しいキャラが… おばあちゃん、ドコ行ったのかな…? しかも、何かを言おうとしていたんじゃなかったっけ? 」

「 お父さんが言いました。 これは大変だ。 よし、みんなで温泉に行こう! 」

「 …… 」

「 あーちゃんは、お父さんと温泉に行ったのでした 」

「 …… 」ジューッ!(ハンバーグを焼く音)

「 ところが、温泉には、お風呂がありませんでした 」

「 詐欺だね、それは 」

「 従って、お風呂には入れません。 しかし、あーちゃんは、泣きませんでした 」

「 『 従って 』とか、『 しかし 』とか… そんな言葉の意味、分かってんの? 証明問題の解説文みたいじゃん 」

「 いいから、ちゃんと聞いて! 」

「 はいはい 」

「 やはり、お風呂は、どこを探してもありません 」

「 『 やはり 』って… それも、4歳児っぽくないんだケド… 」

「 お父さんは、あーちゃんに言いました。 よし、ちゃっと帰るぞ~! 」

「 ナンで、名古屋弁? ねえ、それ、誰に教わって来たの? 」

「 あーちゃんは、お父さんと、おうちに帰りました 」

「 …なに気に、スルーかい 」

「 お母さん、いいニオイだねぇ~ 」

「 今日は、ハンバーグです 」

「 あたし、カレー大好き 」

「 …会話が、成立していないような…  しかも、作っていて少々、ムカつくし 」

「 あーちゃんは、お父さんと宴会をして、楽しく暮らしました。 お・し・まい 」

「 コントロールとオルト・キーを押して、デリートを連打した強制終了のようなラストだね… 宴会って、ナニ? 結局、おばあちゃんは、どうなったの? 」

「 おばあちゃんは、お母さんと買い物に行ったんだよ? 」

「 そんな展開、ドコにもなかったような気がするんだケド? てか… お母さんって、出て来た? 」

「 気のせいだよ 」

「 『 気のせい 』って… あんた、ホントに4歳か? 」


 TVニュースなどで聞いた単語を使っているようなのだが、どうやら、前後の文章も記憶していて、似たようなシチェーションがあると、咄嗟に使うようである。

 記憶力の良さには、とにかく驚かされた。 子供って、ホント面白いな……

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