第14話、『 呼び掛けたままの夏 』



 明日という日を描いた夏は、限りなく蒼い空の下

 

 緩やかな丘を登り、浅い息の中で、風を覚えたあの日・・・


 聡明なる静かな声に心を向け


 いつしか私は、見えない河を探した




 叫びたいほどの寂しさに、私はふと耳を澄ます


 頬を伝う雫に、過去に震える唇に、懐かしい声たちが縁どって行く・・・


 見えない河は、泡沫なる心を映し


 やがて、いつか帰る場所へと、私を誘う




 思い出す命


 帰るべき命


 抱きしめたはずの、確かなる記憶の余韻


 戻らない想い出


 忘られた、あの夏の日



 見えない河の辺に立ち、洗われし足先に見ゆる、明日の欠片・・・


 今、永遠なる夏が、私の横を駆けて逝く



 明日のすべてを、見えない河の辺に映して・・・




*2004年に出版した小説( 日本純文学 )『 呼び掛けたままの夏 』の

  プロローグを、詩的に創作した作品です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る