第11話 MotoGuzzi police 1000 その3
意外に勇ましい排気音は、Mini Cooper S。
作られた年代が旧いので、機械っぽい荒々しさのあるサウンドで
そのあたりは、MotoGuzziと良く似ている。
あまり、ノイズに気を使わない時代の車。ギアや、エンジンの音も
機械そのまま。
そこが、機械好きには好まれる。
「さ、行くよ。」と、れーみぃは、にこにこしながら
ヘルメットのバイザーを下ろし、電車車庫から
街路に出た。
曲がりくねった山沿いの道は、さっき来たとおり。
木が生い茂っていて、少し薄暗い。
ゆっくりと、40km/h程度でMotoGuzziを走らせる、れーみぃ。
背筋もしゃん、と伸ばして、凛々しいハイウェイ・パトロール。
目前の交差点。
真っ直ぐ昇って丘を越えて、いつもの街に戻る。
と.....。
左側の海沿いから。
ダッヂ・チャレンジャーSが、太いサウンドを響かせて
いきなり一時停止せずに、飛び込んできたので
丘から降りてきた、対向車線のフィアット500は
急ブレーキ。
衝突は避けられた。
ダッヂは、そのまま交差点を通過して、右手へ。
れーみぃは、勤務時間外だけど
青色回転灯を付け、サイレンを鳴らす。
ギアを3速に落とし、急加速。
トルクのあるMotoGuzzi 1000は、それでもリア・タイヤをスライドさせて
交差点を右に。
無線で、周囲のパトロールカーに連絡する、れーみぃ。
「こちら、Mary-Seven#3、逃走車両を追跡中。車両は黒のダッヂ・チャレンジャーS。
市交通局電車車庫横交差点を、海側より山の手の住宅街へ逃走。
付近のAdam-Seven、応答願います!。」
モトローラ無線から、FMのノイズが流れ、次いで、応答。
「Mary-Seven#3,こちらはAdam-Seven#30。 住宅街に居る。
中央街路で封鎖する。応援願う。」
と、パトロールカーから連絡。
れーみぃは「こちら、Mary-Seven#3、了解。追跡を続ける。」
追って、本部から「あ、本部だ。れーみぃ?勤務時間は過ぎている。
深追いはするな。以上。」と、部長の優しい声。
れーみぃは、追跡を続けながらヘルメットの下で微笑む。
「こちら、Mary-Seven#3、本部了解。部長、ありがと。」と。
余裕のあるれーみぃは、MotoGuzziのスロットルを開き
逃走車両を見失わないように追尾。
その様子を、NaomiはTR1と一緒に。追いかけながら。
「かーっこいい。映画みたい!。」と。
めぐは、リアシートで「ほんと。」
お巡りさんって、危ないけど、かっこいい....。
リサは、ミニ・クーパーをドライブして
友人れーみぃの、勇姿に感激していた。
「わたしも、あんなふうに。」
みんなのために役立ちたい。
そう、おじいちゃんはそれで、国鉄の仕事に一生を捧げて
定年になったら、すぐ天国にいっちゃったけど。
その気持を、わたしも受け継がなくっちゃ。
そんな風に、考えていた。
ダッヂ・チャレンジャーのドライバーも
別に、逃げなくても良かった。
でも、なんとなく追われてしまうと、逃げたくなる(笑)。
そんなものだし、ドライバーって
腕試しに、白バイを振り切った、なんて
自慢のひとつもしたくなる事も、たまにはある。
そんな理由で、曲がりくねった道を
飛ばして、逃げていた。
けれど......。
目の前の住宅街、並木道の真ん中に
横向きに見えるのは、パトロールカーだった。
ちらりと、バックミラーを見ると
白バイは、付かず離れずで付いてきていた。
「goddem!!!」
パトロールカーのドライバー、Steveは、アメリカン。
ブロンド、ブルー・アイの大男。
無線で、れーみぃに連絡「れーみぃ、こちらはスティーヴ。目標発見。
道路は封鎖中だ。念のため離れていてくれ。銃を構える。」
「了解」れーみぃは、エンジンを低く抑えて距離を取る。
銃弾が当たらないように。
Steveは、腰のホルスターからリボルバー銃を取り出す。
S&W357マグナム、ハイウェイ・パトロールマン。
文字通り、この仕事の為に作られた銃だ。
それを取り出し、ドアを開いて車の反対側から来る
ダッヂに向けて銃口。
マイクで叫ぶ。
「停まれ! 停まらんと撃つぞ!」
そこまで言われると、ダッヂの男も
逆らいたくなる(笑)。
不条理だが、そんなものだ。
パトカーの手前に路地を見つけて、いきなり右折して後退。
スイッチ・バックして
元来た道を戻り始めた。
つまり、Naomiやめぐ、リサの方向へ突っ込んでくる訳だ。
その前に、白バイのれーみぃと鉢合わせ!
「危ない!れーみぃ、避けろ!」スティーヴは、無線で叫ぶ。
れーみぃは、落ち着き払っていた。
スティーブと同じ、S&Wマグナムを腰から抜き、MotoGuzziのハンドルを支えにして
照準を構える。
マイクで叫ぶ。「停まりなさい!」
ダッヂは、そのままMotoGuzziを避けて通過しようとした。
カーブを曲がって、めぐたちの乗ったTR1はちょうど、ダッヂの目前!
「危ない!」
れーみぃは、ダッヂの後輪にマグナム弾を撃ち込む。
命中!
コントロールを失ったダッヂは、カーブでスピン。
めぐたちのTR1のすぐそばへ。
「いやっ!」
Naomiは、ブレーキを掛けて、路側へ避けた。
でも、後ろにめぐが乗っていたので、動きが間に合わない。
「あぶない!」と、めぐは思った瞬間.....。
TR1とNaomi、それとめぐは
瞬間、宙を舞って歩道へと軟着陸(笑)。
もちろん、めぐの魔法である。
後ろにいたリサにも、理由が分からない。
ダッヂは、並木にぶつかって停止した.....。
「こちら、Mary-Seven#3、逃走車両は停止、ドライバーに怪我はなし。
後輪パンクの為レッカー願います、本部どうぞ。」
れーみぃは、無線で本部に報告。
「本部、了解。れーみぃ、お疲れ様。」と、部長の声。
れーみぃに安堵の表情。
TR1を歩道から出して、Naomiはゆっくりとれーみぃに近づいた。
「すごいねー。かっこいい。」
れーみぃは、柔らかな表情。
さっきの凛々しいポリスの顔とは違って。
「ううん、でも、どうやって空飛んだの?」と、れーみぃは
見ていた。
「わかんないの。」と、Naomiもその理由には気づかない。
めぐ自身も(笑)。
咄嗟だもん。
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