第4話 YZR500 その2


危ない!



クラッチをつないだまま、ルーフィは

オートバイに跨って、スロットルを全開にした。


軽々と前輪を持ち上げて、2ストロークV4ユニットは

軽快な、猫撫で声を上げている。だが

エンジン回転計は、針が見えない速度で駆け上がる。

ので、音で判断してルーフィはシフトを上げた。


一瞬、宙に浮いていた前輪は下がりかけるが

クラッチがつながるとまた、前輪を持ち上げた。


そのままフローティング・ターンして

左手を上げて、戻ってきた警官たちに「ごくろうさーん」と

にこやかに挨拶(笑)。



すると、隠れていたらしい警官が発砲!




「発砲とは、恐れ入るな」と、ルーフィは車体を少し右に傾けて。

自分は左に傾いた。


ハング・オフである。



拳銃はリボルバーらしく、連続発砲の速度は遅い。


次の弾が飛んで来る前には、逃げられる。


そう思い、ルーフィは車体を真っ直ぐに立て直して

スロットルを全開にした。






めぐは、置いていかれたガードマン詰め所で

それを見ていて。



戻ってきた警官が援護射撃をしようとし

ショート・ライフルガンを取り出すのを見た。


「止めて!」




ライフルガンを発砲しようとした警官の前に立ち塞がって、両手を広げた。



「危ない!」

警官も驚いた。まさかライフルの前に人が出てくるとは思わなかったのだろう。



めぐ自身も驚いているほど、咄嗟の行動だった。



しかし、引き金を止めるほど、人間の神経は都合よく出来ていない。




BANG!


弾は放たれた。が・・・・。




警官も驚く速度で、銃口をずらされた。


駆け寄ってきた人影が、銃口を動かした。

その人は、自ら銃弾を受けて、倒れる。




人影は、クリスタさんだった。












その光景を見ためぐは「いやーっ!」と、叫んだ。



瞬間、起こった事は・・・見ている者には理解できない事だった。





被弾したはずのクリスタさんには血も流れず、出て行った筈の銃弾は


消えて無くなっていた。




「あ、あれ?」と警官も驚いて


ライフル弾の行方を目で追っていた。






クリスタさんは、なんとなく理解していた。


「めぐちゃん・・・・ありがとう。」




めぐが、集中して「ひとつのこと」を願ったので


魔法の封印が解かれ、銃弾はおそらく


異次元空間へ飛ばされたのだろう。



座標を0次元に送るなら、速度は無限大に出来るのは

これまで述べた通りだ。



(v2)2-(v1)2=2as

F=ma


その連立解である。


mはもちろん、0次元ならゼロだから

a=無限大に出来る。


物凄い速度で加速させ、光速をv2が越えれば

時間は逆転するのは、アルバート・アインシュタインの提唱する

相対性理論の通りだ。




v2=v1+atだ。





後で、発砲した銃弾の行方を追わされて


警官は上司に怒鳴られて(笑)


銃弾探しを(見つかるまで)させられる事だろうけれど。




それは自業自得(笑)

身柄確保に発砲は、この世界でも許される事ではない。



警官自身の攻撃心が、行き過ぎた行動を招いたのである。









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