第13話

「狭いけれど、居心地が良い」




 初めての一人暮らしは自由で心が軽い。新生活は私を、新鮮な大人に変えてくれる。好きな時間に好きなご飯を食べて、好きな時間に洗濯をして、お風呂に入って。何もかも自分のルールで生きることが出来るのだ。




 引っ越しの作業も、生活をするための道具を揃える事や水道などの手続きも終わり、好きな家具に囲まれて、私は心を癒している。物は元々少ないままで過ごせる人間なので、持ってくるものもそんなにはなかったから、すぐにのんびり暮らすことが出来た。必要なものは百円均一で揃えられるし困ることもない。




 こんなに自由な暮らしは初めてだ。とても感動している。誰かがいることなんて気にすることもなくて、とっても心がふかふかなのだ。




 今日は周辺地域を知るために、桜が散らばった緑道とか、商店街を散策しようかなと、出かける準備をしていた。すると、突然インターホンが鳴る。




――――ピーーンポーーン




「エエぇッ!……びっくりしたぁ……」




 一人暮らしだと、一軒家と違って何故かピンポンにドキリとした。音が大きく、小さな部屋に響きすぎるだけだろうか。ただ、出て用件を聞くだけなのに不思議だ。




 少し考えていたのだろう、すぐに玄関を開けないので、叫び声が聞こえた。




「宅配便でーーーーーーす!」




 大きな声に安心して、扉をすぐに開ける。宅配業者の方は、私の聞き慣れた地名を告げて、サインをくださいと急いでいた。




 印鑑をそのうち用意しておかなければと思いながら、たまたま玄関に置いてあったボールペンでサインをすると、重いのでと大きな荷物を玄関まで運び、置いてくれた。そして、忍者のように、宅配屋さんは消えていった。




「忙しいのかな、春だもんね。あ、どこからの荷物だろ……めちゃくちゃ大きいし……え?」




 誰からの荷物なのか、初めて疑問を持ち段ボールを見るとお父さんからだった。しっかりとお父さんの名前と住所があった。




「えーー、いらないよ」




 不満を漏らしながら、ガムテープで縛られた、中身をバリバリと開けると、大きな野菜がいっぱい入っていた。こんなの、一人じゃ食べきれないのに。腐らせてしまったら勿体ないのに。そう思うくらい、おっきな段ボールには、たくさん野菜が入っていた。




「荷物こんなにいらないってば……」




 迷惑だ、なんて思いながら、とりあえず、私は冷蔵庫に入るだけ野菜を急いでしまって、今日は周辺を散策しに行った。

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