今日もあいつの声がする

宮瀬 みかん

去年の春から今年の夏

去年の春にインコを飼った

俺は毎日言葉を教えようとインコに話しかける


インコは最初は頑なに喋らなかった


インコに「おはよう 今日は晴れだ 昨日彼女に振られたんだ 酷いだろ」と話しかけても

一昨年亡くなった両親が飼っていた犬が「バフン」と鳴くだけだった


あいつが喋るようになったのは去年の秋だった


突然だった


だがそれは俺の予想に反したものだった


インコの声は酷く不快なもので

俺が「おはよう」と話しかけると

どすの利いた声で「おはよー」と言った


落胆した


俺はあいつに話しかけるのをやめた


だが飼っていたいた犬が鳴くとあいつは喋る


毎日のことだった


「バフンバフン」と犬が鳴いた

あいつは呼応するようにどすの利いた声で「おはよー 今日は晴れだ 昨日彼女に振られたんだ 酷いだろ」と言った


不愉快だった


俺はついにあいつを殺した


去年の冬だった


あいつは最後にどすの利いた声で「動物のルールに反した行為は禁止します」と言った


犬が「バフン」と鳴いた

もうあいつは喋らない


俺はあいつが賢かったと気付いたのは今年の春だ


もうあいつはいない


今日もあいつの声がする

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

今日もあいつの声がする 宮瀬 みかん @v4_mikan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る