京都魔界伝説殺人事件・関東平将門

近衛源二郎

第1話 日本三大怨霊 平将門

怨霊等というものは、何も京都にだけ災いをもたらすとは限りません。

もし、京都特有の者だ、等と思っている京都人がいたら。

不遜極まりないと言わざるを得ない。

京都府警察本部捜査1課の部屋では、関東から帰った小林が、のんびりしている。

『やっぱり、京都の番茶が一番

 落ち着きますよ。

 僕は。』

その頃、鑑識の佐武に一本の電話が入っていた。

この電話によって、佐武と小林は、またもや関東に行くことになるのだが、小林は、熱い番茶をすすっている。

電話は、茨城県警察からの協力依頼であった。

殺人事件と思われる遺体に、怨念などが残っていないかを調べてほしいというものだった。

佐武にしてみれば、馬鹿馬鹿しいことこの上ないのだが。

だいたい、この世に怨霊怨念などというものは、存在するはずもない。

魔界的事件を数々解決してきたとされてはいるが、ほとんど勘太郎の功績であった。

『まぁ、一応、勘太郎に報告し

 ておくか。』

佐武から報告を受けた勘太郎。

一応、茨城県警察の捜査書類に目を通した。

『国王神社か。

 平将門な。

 なるほど。

 怨霊怨念と絡める気持ちは、

 わからないでもないな。

 だが、写真からですら、死因

 はこの傷。

 明らかに、日本刀の脇差

 しや。

 いたずらに、怨霊怨念と繋げ

 ると、神社に迷惑が。』

翌朝、とある人物の訪問を待って、勘太郎は、その人物と茨城県坂東市の国王神社に向かった。

被害者が転がされていたという場所と鳥居を行ったり来たりしている勘太郎。

同行の人物は、被害者の遺体が転がされていた辺りにしゃがみこんでいる。

現場監視の警察官からの連絡でも受けたのだろう。

サイレンを鳴らして、覆面パトカーがやってきた。

ジャンパー姿の中年男が、勘太郎に近づいていく。

勘太郎を訪問した客、京都府警察鑑識課警部補佐武修一と京都府警察本部捜査1課係長小林警部補である。

勘太郎と佐武は、なぜかレンタカーである。

運転手代わりに、小林がついて来ていた。

覆面パトカーから降りた若い捜査員が、どこかに電話をかけていた。

その様子を見ていた小林が、下車して若い刑事に声をかけた。

『茨城県警察の方ですよね。

 京都府警察捜査1課の小林

 です。

 貴警察からの、協力依頼に応

 えて、やって参りました。』

若い刑事も、鑑識課から京都に協力を依頼したことは聞いていた。

『それは、お疲れ様です。

 あちらのお2人は。』

『しゃがみこんでいる方は、

 京都府警察鑑識課副課長佐武

 修一警部補です。

 鳥居と遺体放置現場を行った

 り来たりしている方は。

 警察庁刑事企画室刑事局長真鍋

 勘太郎警視正です。』

そこまで聞いて、若い刑事ですら飛び上がって驚いた。

『警部殿。

 警部殿。

 その方は・・・。

 あちゃ~。』

目を押さえてしまった。

警部と呼ばれた中年男。

勘太郎の胸ぐらを捻り上げてしまっていた。

小林の横には、茨城県警察の鑑識課も数人来ていた。

全員が、直立不動の姿勢で最敬礼している。

『お前ら、何しとんね。』

『貴様、ここで何してる。

 何者や。』

勘太郎、少しも慌てない。

少しも怒らない。

『君が捻り上げている私の背広

 の襟の裏側を見てご覧な

 さい。』

そこには、警視正の階級章が貼ってあるのだが。

この警部、なんと見たことがないものだから。

『なんやこれ。

 何の玩具や。』

小林の横の若い刑事は、気が気ではない。

『警部・・・

 いい加減にして下さい。

 その方は、警察庁刑事局長、

 真鍋勘太郎警視正閣下であら

 せられます。』

そこまで聞いて、警部もようやく、ことの重大さに気がついた。

手を離して、土下座平伏してしまった。

『も・も・申し訳ございません。

 私、茨城県警察境警察署捜査

 1係係長正田信平と申します。

 数々の、ご無礼、お許し下

 さい。』

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