第17話 美しい物は次々死んで行く

 山本耀司さんの格言で知らない一節だった。私は恩師に美しい物程時を経て輝きは増して行くと教わっていた。山本耀司さんの言葉で私が好きだったのはオールアバウトヨウジヤマモトの中にある雑誌で語った一節だ。一語一句違わず書き込むには量が長いので要約して伝えると次のようになる。


 『まずA級とB級のセンスを知らなければいけない。全部A級で揃えるとカッコ悪い。間抜けな所を織り交ぜて〜中略〜ホテルで飲む冷えたシャンパンの味と余った小銭で飲むビールの美味しさを知っていたら〜中略〜欠けた鏡でネッカチーフを整え、疎らな髪をかきあげたなら、それはかなりカッコいい男だ。』


 記憶を頼りに書き込めば上段のような一節だ。これには続きもある。読みたい方は是非ヨウジヤマモトのホームページからBUNKA出版局のオールアバウトヨウジヤマモトを買って探してみて欲しい。


 この言葉が私の聖語だった。雑誌から忘れないように書き写した事もあった。しかし、書き写したノートは無くなり、載っていた雑誌も転居の際にブックオフで売り、書き込んでた日記はmixiでもう使わなくなり、今、オールアバウトヨウジヤマモトを所持してるだけだ。


 聖語と言う割りに丸暗記出来て無いのも滑稽だが、私は溜め込む性格で、捨てると言う事を余りしない。それがチャリボンに本の整理の為にコレクションを出した。結果タバコ臭いと言う理由で151点廃棄処分させられたと聞いて激昂したのだが、断捨離も心の修行だと、『29歳からはじめるロックンロール般若心経』に書いてあった意味を噛み締めている。心がフワッと軽くなる。確かにそうだ。私のトーキングトゥマイセルフも捨てられたのかと、美しい物は次々と死んで行くのだから。


 その格言を初めて見たのは山本耀司さんにコレクションに招待されるまで惚れ込んで買っている上客のInstagramのアカウントだった。ルイス君って言う若い子。変に絡んでブロックされちゃったが、アクセサリーを作って売ったりしてた人だ。同じく服好きで同じ山本耀司ファンだったのだが、今日、その格言を山本耀司さんの口から英語で語られるVTRをYouTubeで見た。


 刹那の輝きばかりを追い求める、過去を廃棄するしか無い現代。それに抗う思想を大学で教授から学んでいたのだが、やはり違うようだ。


 いちいち悲しんで喪失感を嘆いてもしょうがない。今を楽しまないと。

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