第12話 成長と充実

 今日は何時に起きたんだっけかな?ダイエットが成功している。100kg〜95kgまで三ヶ月、長い道のりだった。音楽がまた心地良く聴こえだしてる。アントワープのデジタルファッションショーをFacebookで視聴するまで、あと二日を切った。イベントって時間を合わせるのに、もてなす方も、もてなされる方も緊張するよな。


 電話代の引き落としが10日に変わってた。だから、まだ余ってるお金がある事に気づかずに、ナイトウォーキングでスナック梯子なんてしてしまったんだな。全く、飲み方の汚い、ヤクザみたいな若造になってしまった。でも、そのお陰で気づいた事もある。女性の知性の高さを思い知った。


 初めに、小銭全部落としただけで馴染みの店でハイボールを煽って、次に洒落たダーツバーでコロナビールを飲み干した。1,270円、残りのお金でと入った店で瓶ごと店に入った事を冷やかされて退去し、思い出の女性に1,000円渡して瓶の処理を頼んで帰って来た。


 その後、小銭落としただけで飲んだ馴染みの店にきちんと1,000円払って飲んで、思い出の女性の居る店で2千、何百円だったろう、飲んで、又、女性に告白しちゃった。彼氏よりは子供の方が大事だと言う事を言うので、いつまでも待ってる、子供が大きくなったらなんて歯の浮くようなセリフを言って跡にした。でも久しぶりに言った。本当に好きだったんだよ、なんて。上唇の窪みが綺麗に三角に折れたぼってりした唇は青ざめるようにリップなど塗らなくても化粧してるみたいに顔の肌の色とくっきりコントラストを為している、外国人女性だ。何度熱を上げた事か、冷たくあしらわれた理由も聞いて、告白もしたんだ。男らしく、待っていよう。老後を協力して暮らせるかもしれない。


 打って変わって読書の方だ。私の冷蔵庫はどうもタイムスリップしてるみたいに、忘れた頃に物が出てくる。Amazonウィッシュリストに入れてる本があるじゃないかと、手に取った本は鈴木智彦さん著の『ヤクザの修羅場』だ。今これは刃の上を歩くような心地よいミステリーを読むようにノンフィクションに没頭してる。それを公園のベンチやコンビニのベンチで読みながら、近所の顔見知りと雑談する数日、お婆ちゃんにコーヒー奢ったり、タバコ吸いながら好きに読む。今、PC(パソコン)上で流れてる音楽はサウンドクラウドのパーティーミックスのテクノミュージックだ。色々聴いてるがこう言う打ち込み系の電子音楽がどうも私は好きなようだ。歌詞は何言ってるか分からなくてフィーリングだけで伝わる踊りたくなるダークでディープなサウンドが心地良い。


 コミュニケーションが下手だったのは自分だった。矛盾してる事を言えるのが知性と勘違いしていたが、自分の矛盾を指摘されると言い淀む。10秒前に言ってた事が反対になる。知性や哲学と言う物はそう言う面白いモノだと勘違いしていたが、相手から見れば、「何を言いたいんだ?コイツ、頭大丈夫か?」になる訳だ。


 会話表現と言うモノは往々にしてそうである。父はまだシャイだが、母は私の成長を察知して言いたい事は言って来るようになった。洗濯物を干してお昼の準備と後片付け、手伝って一服。極上の味がする。天まで昇ってしまいそうだ。


 そうか、私は馬鹿だったのか。それに漸(ようや)く、気づいた。この収穫は大きい。これからも父と母の為の子供で居る事をここに誓おう。

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