(お願いもっと傍にきて)
明日はやがて今日になり、そうして夜はやってきた。本もお喋りも必要ない。シーツの裾をつまみ上げ、冷たい手を招く。迎え入れれば天面が軋んだ。
平静を装っても跳ねる心臓は正直だ。近付けば秘密の全てが知られてしまう気さえする。膝を抱き、にじくる彼を見下ろせば、シーツに広がる長い髪。
大きな体へ身を寄せて、寝具の隙間へ潜り込む。ぽっかり空いた洞の中、爪先が腰へ届いた。密着した寝巻越しの肌に温度を感じ、部屋は急に暖まる。
厚い胸へと手を這わし、布地の隙間を割り広げていく。湯気の立つような素肌に目眩がした。脈打つ胸へと頭を寄せれば、踊りもしないのに汗が滲む。
耳をそっと近づける。髪を吐息が撫で、ワイスはぱっと離れた。誤魔化そうと目を瞑る。薄目を開けてそっと窺えば、閉ざす瞼さえ涼やかに彼は眠る。
就寝時特有のゆったりした呼吸が部屋を満たす。温とい夜にワイスは色めく。今夜はもとより帰さないつもりだった。それでも痛いほどの興奮がある。
弾けそうな胸を抑え、ワイスはぎゅっと肩を抱く。普段あんなに遠いのに今は直に手が届く。髪も、額も、唇さえ。怖々と口づけて、ワイスは眠った。
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