最近僕のマンションにくる女の子

@kazmir

第1話

最近僕のマンションに女の子が来るようになった。


東京に転勤してから僕は仕事づくめで家と会社を往復する毎日。飼っていた猫が3年前に交通事故でいなくなってからは一人で暮らしている。


彼女は来る前に電話やLINEで連絡してくる時もあるけど、たいてい日曜の午後にふらっとやって来る。


玄関のチャイムが鳴った。


ドアを開けると彼女は「ニコッ」と微笑み、おもむろに部屋に入ってくる。


「シュークリーム買ってきた」


黄色い横長の箱にシュークリームが5つ入っている。


「おっ、ありがと」

「相変わらず、散らかってるねー」彼女が脱ぎっぱなしのYシャツを見ながらつぶやく。

「掃除してないからね」僕はベッドに寝転がるとスマホを見ながら答える。


「ふーん」と彼女は特に呆れる様子もなく寝ている僕の頬にキスしてきた。


「えっ…」

「ダメなの?」

「別にいいけど」


いつものようにゆっくりと時間が流れる日曜の午後だった。


彼女と出会ったのは1月。僕がネットカフェを出ると目の前の階段に女の子が後ろ向きで座っていた。


くたびれた格好で黒いレザーのカバンと薄茶色のトートバッグが腰元にある。


僕は横を通り抜けて階段を降りた。そのまま駅へ向かおうとしたが少し考えた後、なんとなく気になってまた階段を上がった。


「あの…」


それから彼女と僕はたびたび会うようになった。


ある日曜日の午後、僕はキッチンで母親と電話で話をしていた。


「結婚!?えっ… 本当に?」

「うん」

「話は聞いてたけど…、それにしても…どこの子かも分からないんだし、その子仕事もしてないんでしょ?」

「俺が養えばいいんだから」

「お父さんがなんて言うか…」

母親は困惑していた。

「もう決めたから」


僕はそう言って電話をきった。


しばらくの間日差しの強い窓から外をぼーっと眺めていた。


今日も気温は高くむし暑い。


リビングにいる彼女はいつものようにテレビを見ながら尻尾を左右にゆっくりと揺らしている。

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