閑話:商人スレの英雄達Ⅲ

プロローグ:たった一人の英雄譚



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ID:  bo-ken

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《【皆で作ろう】RL商人専用スレ 三G目 【シルクロード】 を閲覧します》



◇◇◇


 

【皆で作ろう】RL商人専用スレ 三G目 【シルクロード】



1:名前:名無しの商人

立てやした


2:名前:名無しの商人

おつ♡


3:名前:名無しの商人

今日も雑魚からゴールド美味しい!ヨシ!!


4:名前:名無しの商人

なんか最近パーティ誘われなくなってきた気がする、悲しい


ヨシ!(ヤケクソ)


5:名前:名無しの商人

……あ、オレだけだと思ってたけど同士いたのか

まだゼロって訳じゃ当然ないけど減ったなあ


6:名前:名無しの冒険者

いちおつ!


>>4

>>5

こっちは普段通り、てか多いぐらいだわ……たまたまじゃねーの?


7:名前:名無しの商人

>>6

おっ冒険者さんだ! だよなあ……そう信じたいわね


8:名前:名無しの商人

今日もギルドの皆の財布をパンッパンにしてやるぜ!


9:名前:名無しの商人

何だかんだで商人の交渉術良いな、ポーションとか武器とか安くNPCから買えるのは嬉しいわ


10:名前:名無しの商人

パーティメンバーの分も買ってるw安いし


……パシr……いやなんでもない


11:名前:名無しの冒険者

>>9

>>10

そのスキル寄越せwこっちは正直アイテムが落ちやすくなるだけだからG的にはまだ微妙だわ


12:名前:名無しの商人

やだw

つーか『アイテム』と『金』、俺達組んだら凄いんじゃねーの?


13:名前:名無しの商人

アイテムドロップとゴールドドロップが合わさり最強に見える……


14:名前:名無しの商人

実際、商人と冒険者が組んだら色々最強だぞ


……で、誰が闘うんだよwwwwwww


15:名前:名無しの商人

もはやライフがドロップしそう……


16:名前:名無しの商人

やっぱ無しだわ


17:名前:名無しの商人

そうだな……


18:名前:名無しの商人

(というか、俺らソロじゃマジで終わってるよな)


19:名前:名無しの冒険者

ま、お互い頑張ろうぜ

確実にパーティの役に立ってるし


20:名前:名無しの商人

今日もRLがんばってこー!!!



◇◇◇



「……」




《【ギルド募集中】RL商人専用スレ 四G目 【フレンド募集中】 を閲覧します》



◇◇◇



【ギルド募集中】RL商人専用スレ 四G目 【フレンド募集中】



33:名前:名無しの商人

なあ、やっぱ俺らあんまりだよな


34:名前:名無しの商人

最近マジで誘われない


35:名前:名無しの商人

……正直言えば、かなりツライっす……


36:名前:名無しの商人

お、俺達もソロで頑張るか……?


37:名前:名無しの商人

俺今レベル15だけど、始まりの街のモンスターにやれるかどうか心配なレベル


38:名前:名無しの商人

す、スライムなら……


39:名前:名無しの商人

何体倒せばレベル上がるんだよwwwwwww


40:名前:名無しの商人

この前本スレ行ったらくっそ罵倒されたわ

あのクソ共マジで職業しか見てねえ


41:名前:名無しのプレイヤー

ああ、アイツらもう完全に俺らの事不遇職だと思ってるから……

名前は↑こうしてる


42:名前:名無しのプレイヤー

マジかよ 俺も変更しとこ……

これで職業もまっさらになってくれたらいいんだけどwwww


はあ……


43:名前:名無しの冒険者

え、皆嘘だろ


44:名前:名無しのプレイヤー

>>43

おっす そっちは順調みたいじゃん


45:名前:名無しのプレイヤー

>>43

冒険者さん……後は託した


46:名前:名無しの冒険者

>>44

>>45

いやいや冗談よしてくれって 同じドロップ上昇職として頑張ろうぜ


47:名前:名無しのプレイヤー

>>46

そうは言っても、そっちは片手剣or小刀、余った手に盾も装備出来るんだろ?半生産半戦闘職みたいなもんだよな アイテムドロップとか凄え需要あるしw


こっちは斧だぜ斧単体wソロじゃ無理だわ 扱いずらいし……

戦闘スキルも見た事ねえ!無理!



48:名前:名無しのプレイヤー

>>46

後は……頼んだ……ガク


49:名前:名無しのプレイヤー

商人は死にました!商人は死にました!


50:名前:名無しのプレイヤー

誰かVRトランプやろうぜ




◇◇◇



《【】RL商人専用スレ 五G目 【】 を閲覧します》


◇◇◇



【】RL商人専用スレ 五G目 【】



2:名前:名無しのプレイヤー

うおおおおおおおお全財産100万G超えた!!!!!


……なおフレンドはゼロ……もうやる気起きないっす


3:名前:名無しのプレイヤー

強職の優しいフレンドは売ってますか?


4:名前:名無しのプレイヤー

売ってません


5:名前:名無しのプレイヤー

あーあ、商人に即死スキルとか実装されればな


6:名前:名無しのプレイヤー

即死(対象自分)


7:名前:名無しのプレイヤー

引退します


ありがとうございました。またいつか


8:名前:名無しのプレイヤー

>>3

息をするように引退宣言するな

……最近ギルドの皆の目線がイタイ


9:名前:名無しの冒険者

お前ら、俺と一緒に狩りやらない?知り合いとかに頼んでみるからさ


10:名前:名無しのプレイヤー

>>9

気持ちだけ受け取るよ 流石に商人がくっ付いてきたらアンタの評判まで落ちるぜ


11:名前:名無しのプレイヤー

>>9

すまんがもう起動させる気が起きねえ……


12:名前:名無しの冒険者

そっか


13:名前:名無しの冒険者

もういいわ


◇◇◇




《プレミアムRyunenからログアウトしました》




「……何見てんだ俺は」




《GAME START》


《ボウケンさん、RLの世界へようこそ!》




気が付いたら見ていた、そんな過去ログを消してRLにログインする。


文字だらけの世界から一転、そこはもはや慣れたファンタジーだ。



《ボウケン LEVEL45 王都冒険者》



「さて、今日は――」



『よっケン!今ヒマ?ダンジョン行こうぜ、こっちはいつものメンバー揃ってるわ』

『……了解』


『ボウケンさーん!今手空いてますか?』

『すんません無理っす。また今度頼みます』

『了解です!』


『狩り手伝ってちょ~』

『ごめ今むり』

『マジかー了解』



ログインするやいなや掛かる声。

俺のフレンドはいつの間にか百人は超えた。


コレも全て、冒険者という職業があってこそだ。


冒険者の上位職の中で、一番不人気な王都冒険者でもコレ。

毎日毎日お誘いのメッセージは絶えない。

それだけこの職業のメリットはデカいんだ。




《パラパラ 重騎士 LEVEL45》

《マジカ  魔術士 LEVEL46》

《すかれいあ 上級聖職者 LEVEL45》



「おまた」

「今日はケンが空いてて助かったわ~」

「……っとアイテム確認……」



現れる三人。

コイツらとは久しぶりだったが、そのやりやすさは覚えていた。


……タンクとして優秀な重騎士に。

アタッカーとして最強格の魔術士。

ヒーラーとして……以下省略。


とにかく、ガチガチのメンバーの三人である。



「ギリギリな、さっさと行こうぜ」


「……あ。やべ復活の書忘れた、買ってくる」

「おーい地雷か?早くしてくれよ」

「ははっ、このパーティなら要らねえぐらいだけど」



2人はそう言って、ヒーラーの聖職者が雑貨屋まで走って行った後。


『地雷』。

そんな言葉に反応した一人が、ある方向へ指を指す。



「――オイオイ見ろよアレ、アレこそ地雷だろ!」

「うおっホントだ!」



デカい声を出す二人。

その先には――



《そうきゅう 雑貨商人 LEVEL42》



「しょ、商人……しかもなんか変な上位職?になってるぞ!」

「ざっか商人って!遂にNPC化か!?ハハハハハ!」



遠く、商人の名前を見るやいなや笑いだす彼ら。


『そうだよな』――なんて、適当に選んだ同意の言葉を出そうとした。

でも、それは出なかった。


……腹の中で何かが燃えて、煮えたぎっている。



「つーか王都で最近見るけど、何かあったの? 」

「心優しい戦闘職が寄生許してんだろ」

「ハハッ、不遇も行き過ぎると情けを掛けられるようになるんだろうな」



……『確かに』。

今度こそ、その台詞を絞り出そうとした。


ガチメンバーの彼らについていけば、すんなりと今日のダンジョンは終わる。

なんならシークレットだって余裕だ。

だから、適当に今は往なしておけばいい。


それが本心じゃなかろうと。

だから。

今だけは――



「――でもそういや噂でバカ強ぇ商人が居るらしいぞ。あの亡霊を倒したとか聞いた」

「なんだそれ!おいおい遂に嘘情報流してんじゃねーのか商人共――」



――その時。

溜まったナニカは、コップの縁から溢れてしまって。



「……なあ」



「!?な、何だよ」

「え、顔怖――」



「――勝手な予想でほざいてんじゃねえよ、クソ共が」



「……は?」

「!?」



思わず出てしまう言葉。

固まる二人。



「なあ、その『商人共』の何を知ってんだ?知った上で言ってんのか?」



「おまっ、急にどうした」

「何か変だぞ――」



しかしながら止まらない。


……ああ、終わった。



「テメエらにアイツらを馬鹿にする資格なんて無えんだよ……チッ」



ようやく止まる俺の口。

手遅れにも程がある。


……でも、もういいや。


吐き出して、妙にスッキリした自分が居た。

貴重(笑)なフレンド二人を犠牲に。



「抜けるわ、じゃあな。もう会わねーだろうけど」



《パーティを離脱しました》


《パラパラ様のフレンド登録を消去しました》


《マジカ様のフレンド登録を消去しました》






「……はっ。また減っちまった」



投げやりに笑い王都を歩く。

ここ最近オカしいわ俺。


フレンドに声を掛け直す気も起きない。

ああ。今日はもう知らない奴らと組みたい気分だ。




……そうだな。

久しぶりに野良で、潜ってみるか。




《ダンジョンマッチングを開始します》


《ダンジョンマッチングに成功しました》


《準備はよろしいですか?》


《パーティーメンバー全員の準備が整いました》


《始まりのダンジョンへ転移します》

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