掲示板回:目覚める意思



【クソ調整】魔法剣士RL専用スレ⑧ 【運営見てる〜?】


570:名前:名無しの魔法剣士

……あ、そろそろかな


571:名前:名無しの魔法剣士

お前らどうせ行ってねえだろ


572:名前:名無しの魔法剣士

だって無理なの分かってるもん


573:名前:名無しの魔法剣士

行く行く詐欺やめろ()


574:名前:名無しの魔法剣士

ま、もしかしたら行ってる奴いるかもしれないし

応援だけはしとくぜ


575:名前:名無しの魔法剣士

魔法剣士VRトランプ部の者です


部屋番号39018、パスはmahoukensiだ

ちなやるのは『大富豪』、今から建てるから来いよ~


576:名前:名無しの魔法剣士

何か知らない間に別ゲー部出来てて草


577:名前:名無しの魔法剣士

行くわ


578:名前:名無しの魔法剣士

っしゃあ、俺の豪運見せてやるか


579:名前:名無しの魔法剣士

もう誰もRLの話してねえ!


……が、頑張れよ~商人達




◇◇◇




氷雪の大鷲。


そりゃ、最初は不安しか無かったモノだったが――俺達は『戦えて』いた。



「――『パワースウィング』」


「おらあ!!」


「――『ファイアーボール』!」



感覚は合っているもので、商人である『リーダー』は本当に上手かった。


大鷲の攻撃を躱しながら、威力の高い武技でヘイトを自身に向けている。

ほかの商人二人もそれに合わせ上手く立ち回り、商人三人で大鷲を抑え込んでいた。


加えて魔法士は持ち前の高い攻撃力の魔法でHPを削り――



「『マジックヒール』!」



俺は、数少ない被弾を回復している。

持ち前の器用貧乏の為、その回復量は少ないが。



「ナイスヒール――おらあ!」



ソロでずっとやっていたが、今パーティーでプレイしている今は比べ物にならないぐらい楽しい。


……でも。

このパーティで俺だけが明らかに弱い事実。

それだけは――ずっと心に残っていた。



「――『パワースウィング』!」


「っし、行けるぜこりゃあ……『ファイアーボール』!」



空を舞いながら攻撃してくる大鷲を避け、また武技を放つリーダー。


合わせて火球を飛ばす魔法士のカトー。


刻々と近付く『狂暴化』へのタイムリミット。



「……このまま行ってくれ」



必ずやってくる『それ』に――俺は目を瞑りながら、ボスとの戦闘を続けていった。










……俺はずっとソロだった。

期待や責任を負うのが嫌だったから。


失敗や失望を受けるのが何よりも嫌だったから。



「――もうすぐ三割切るぞ!!」


「い、行けるか!?何か思ってるより硬くね!?」


「……まずいな、G足りるかな」


「おーい!――うおっあぶねえ!!」



奮闘する三人の商人。

盾でも火力でもない生産職の彼らは、そう思えない程に上手く氷雪の大鷲と戦っている。



「――『ファイアーボール』!頼むぜお前ら!!来るぞ!!」



俺の横にいる魔法士も、彼らと一心同体かのように闘っていた。



「……『マジックヒール』」


「――!サンキュー!構えろお前ら!!」



対する俺はカスみたいなヒールをばら撒いているだけ。


彼らはこんな役割の自分を『必要だ』と言って――絶対に貶さない。



「……」



最初は、商人とのパーティーだから責任なんて無いとか思っていた。

不遇同士の慰め合い、このフィールドボスも絶対に無理だと分かってやっているのだと思っていたんだ。



……しかし、彼らは本気だった。


俺以外の全員が、この先の勝利を掴みに行っている。

それが――何故かとてもやるせなかった。



「……」




『今。俺は、どうしたい?』





そう――自分に、問いかけた。




『『『GAAAAAAAAAAAA!!!』』』




その直後。


氷雪の大鷲が――HPゲージが三割になった事で『狂暴化』を始める。

羽ばたくモーションと共に……その身体を『分身』させていく。



「ひぃ!!来た来た!マジで三羽になってるぞおい――」


「敵う気しねえんだけど!」


「今更言うな!!行くぞ――予定通り、アイツらを死ぬ気で守れ!後衛は待機!」


「――分かった!任せたぜ!」



そんな三羽に彼らと魔法士が声を上げていく。


予定通り、商人三人が『トリプルアタック』まで耐えしのぐ作戦だ。



『GAGAGAGAGAAAA!!』


「うわぁ!!ぐっ、クソ――」


『GAAAAA!!』


「や、やっべえ――がはっ……」


『GAAAA!?』


「――『スラッシュ』、お前ら大丈夫か!」



結果は悲惨だ。

『リーダー』の彼以外、大鷲に対応できず倒れている。


……そりゃそうだ。今まで一羽に三人だったのが、急に一人で相手しなきゃいけなくなったんだから。



「……『マジックヒール』」



でも――俺が出来る事は、こんなヒールだけ。



「っ……!?そ、『そうきゅう』!避けろ!!」


『『GAAAAAA!』』


「え――はぁ!?いや、二羽同時とかこんなの無理――うわぁ!!」



《『そうきゅう』様が死亡しました》



「っ、らあ!!……クソ――どうする……!」



HPがゼロになる『そうきゅう』。

嘆きながら大鷲を往なす『リーダー』。


……作戦では、『トリプルアタック』まで三人が生きるのが必須だった。

生きて、その三連撃を黄金の蘇生術で受けきって――そこから復活した三人の攻撃を与えなくちゃならないんだ。


決して欠けてはいけないピースが……たった今、無くなった。



「――『そうきゅう』は死んだまま待機!今蘇生術を使えば終わりだ、今回は俺達だけで三羽を――!?」


「……はは、このタイミングで『これ』かよ」


「こりゃあ一回やり直しかな……」



突如、攻撃を止める大鷲三羽。

それらが――上空へと舞っていく。



『トリプルアタック』の、サインだった。



『『『GAA……』』』



上空から見下ろす大鷲。

このままじゃ、作戦は失敗だ。



「――何やってんだよ、俺は」



手に持つ魔法剣を握り込む。


『ヒールしか出来ない』……そんな言い訳はもう嫌だった。

『ヒールしか、』の間違いだ。


魔法剣士という職業の特性を、俺は殺している。

そして今――必死に戦っている彼らを自分は見殺しにしようとしている。

俺なんかとは比較にならない程に、強くて優しい者達を。



「…………」



期待と責任が嫌だから、俺はあの商人達に押し付けた。


『パーティの盾』という重圧を。


きっとそれが、自分の為だと思ってやった事だった。



……でも。



今、俺は――途轍もなく『悔しい』んだ。

『出来るかもしれない』事から逃げている自分が。


例えそれがゲームでも――きっと俺はこのままじゃずっと後悔する。


やるんだ、俺は。

『失敗』に『失望』。この後それが、容赦なく俺に降り注ぐとしても!






「……お前ら――」






魔法剣士は、『器用貧乏』なんだ。

出来るのは回復だけじゃない。


この一瞬だけでも、アイツらを全員守りきる。




なって見せろよ、俺。

このパーティーの――『盾役』に!!






「――お前ら全員、今すぐ俺の後ろに付け!!!」



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