装備の新調

《ニシキさん、RLの世界へようこそ!》



ログイン。


個人的にはかなり珍しい時間帯だ。

夜の六時って、昨日ならまだまだ会社内な訳だし。


……といっても、この世界的には盛況しているらしい。




「今日こそは第四の街まで行きてえな」

「いやいや最低レベル三十はいるだろうが!レベリング行くぞ!!」


「カナちゃん一緒にアトリエ行こ~」

「りょうかーい」


「……行くぞ」

「……ああ」




ラロシアアイス、街中。

レベリングに勤しもうとする者、生産活動に向かおうとする者。

……フードを深く被り、怪しい動きをする者。


多種多様なプレイヤーが歩いているこのフィールド。



「……とりあえず、『日課』からだな」



日課。行商クエストの事だ。

始まりの街からグリーンソルデまでの、行商クエストⅠは報酬五万。

グリーンソルデからラロシアアイスまでの行商クエストⅡは報酬十万。


……控え目に言って、かなり美味しいクエストだ。

俺のアイアンアックスの値段は千G。

NPC売りの装備、かつ低ランクの装備だから当たり前なんだが。


行き過ぎた節約のせいと、どうせパーティーでは戦闘の邪魔になるので必要が無かったんだ。

今思えば――シルバーとの行商の時に武器を買っておけば、もっと楽に勝ててたよなあ……

まああの時は時間が無かったわけだし、仕方ない。



「……買うか」



このゲームでは、生産職が作る……所謂プレイヤーメイドの装備の方が強い。

そしてその分値が張ってしまう。当たり前だが。


手持ちのGは五万Gちょっと。

武器の一つぐらいは買えるだろ――




トレード提示板。

プレイヤー同士でアイテムの売買を行う場合、基本はこれで行う。

超高額のレアアイテムともなると、直接会ってトレードするらしいが……それは俺は知らない。


……そして今、俺はそこで立ち尽くしていた。



「……」



舐めていた。

俺のレベル帯の装備は、レベル20から装備出来る『鋼』等級の装備。





【毒のスチールアックス+1】


ATK+25 属性[毒]必要DEX値20 


強化品・属性[毒]付与品。


鋼から造られた片手斧。

切断、投擲等の攻撃に用いる事が出来る。

攻撃成功時、一定確率で攻撃した対象に[状態異常:毒]を付与する。


レアリティ:2


製作者:――

製作者コメント:――


価格:300000G




NPC売りのモノと比較した場合、プレイヤーメイドのモノはかなり違いがある。

強化品……強化と呼ばれる、性能の向上を施す事が出来、属性……この場合は『毒』の属性を付与されてある。

レアリティに関しては段階があり、高ければ高い程希少品。ちなみにNPC売りは全て1だ。



そして――価格。

三十万G。

流石に無理だ……ちなみにこれは、かなり『下』のモノ。


トッププレイヤ―が使うモノになると、それは桁が一つ二つ違ってくる。

同じ『鋼』装備でも、強化、属性、レアリティ……様々な違いがあり、良いモノは値段が大きく跳ね上がる。

トッププレイヤーが集まるギルドには、専属の生産職が所属しているんだとか。


で……幸い俺の欲しい『片手斧』武器は、あまりというか、一番人気が無いジャンルだ。その中で安くてコレなんだけど。



「鉄等級なら……まだ手が出るか」



今使っているアイアンアックスがそれで……レベル十以上が扱える装備だ。


検索等級を鉄に合わせ、価格が低い順にして――検索。



「お、これとか良いな――」





【弱攻のアイアンアックス+1】


ATK+25 属性[弱攻]必要DEX値20 


強化品・属性[弱攻]付与品。


鉄から造られた斧。

初心者にも扱いやすく、切断、突き、投擲等様々な攻撃に用いる事が出来る。

急所攻撃にボーナスダメージを与える。


レアリティ:2


製作者:――

製作者コメント:練習品の為安くしておきます。


価格:50000G





基本俺は出来るだけ急所を狙って攻撃しているから、これはかなり自分のプレイスタイルとマッチしている。

値段もギリギリ購入出来る……した場合一文無しだが。


黄金の一撃はほぼ使えなくなる――が、仕方がない。


購入!



《弱攻のアイアンアックスを購入しました!》


《50000Gを消費しました》



……買ってしまった。

一応俺の趣味は貯金なんだが、最近はむしろ浪費している気がする。

それぐらい、RLが楽しいって事なんだけどさ。


この新武器で闘えるのが――楽しみで仕方ないんだ。



「防具は……また今度だ」



財布はもうほぼゼロ。

同じく鉄等級の防具の新調はまた今度にして。


早速、日課でこの新武器を試そうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る