第21話 休みの前の夜は歌を歌うよ

 セッションていうにはしずかなそれでさ。


 星の瞬きをメトロノームにしたらリズムが狂っちゃった。


「ワン、トゥ、さん・はい」


 祖母は月影歌にして

 祖父は戦地で帰り来ず

 誰が悪いわけじゃない

 わたしが至らぬだけなのさ


 ・・・・・・・・・短い一題目が終わるとすぐに超乃チョウノちゃんのギターソロが入る。


 聴覚障碍のチョウノちゃんはベートーベンのように弦の振動でギターの音を感じ、アパートのわたしの部屋から星を見上げてそのチ・チチチ・チ・チ、っていう瞬きをメトロノームにして演奏する。


 不思議なアンサンブル。


 相手に合わせるだけじゃ絶対にバンドアンサンブルにならない。


 自立した演奏が求められる。


 わたしは、二題目を始めるよ


 ・・・・・・・・・・・


 日は我々に熱を呉れ

 月は夜露を滴らす

 誰もいけなくなくはない

 救えぬわたしが悪いのさ


「も・いっちょ!」


 鍵盤をブラインドタッチで弾きながら観点カンテンさんが叫んだ。


 チョウノちゃんは、ジャッ・ジャッ・ジャ・ジャ・ジャッ、と若くて細い指を、何か指と指の間に透き通ったガラス板でも通してそれを決して引き出されないように力を使ってるみたいにこわばらせてコードを奏で、言語障碍ドラマーの言夢ゲンムはスネアをやっぱり痙攣するような筋肉の振動でブラストする。


 障碍バンド。


 わたしたちは生演奏にもかかわらず、フェイド・アウトの演出を行なったよ🌕


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