新たな仲間

 一瞬、言葉の意味がわからなかった。

 遅れてオレの頭の中で言葉が整理される。

 

「つまり、オレに魔王を倒せということですか?」

「そういうことだ」


 全く意味がわからない。 

 それがどうしてオレとリアとの仲を認めることに繋がるのか。

 大臣やリア、それにフラウやロアも全く理解できていないようで、次の言葉を待っている。


「貴様は人間の言葉が理解できるだろう?」

「そうですが」


 だから何だというのだろうか。


「貴様が魔王になれば、人間と魔物で和平協定が結べるかもしれん」


 宮廷内が激しくどよめいた。

 今まで前例のない和平協定。

 もしそれが本当に実現すれば、今までにない平和な時代が訪れるだろう。

 

 オレなら人間と交渉を行える。不可能なことではない。


「ですが、わざわざ現魔王を殺す必要はありますか?」

「別に殺さなくてもいいが、説得できるか?」

「やってみます」


 話し合ってみなくてはわからない。

 きっと父も認めてくれるはずだ。


「わかった。では、勇者4人を全員連れていけ」

「は?」


 声を上げたのはレーグだった。


「敵である魔物の味方をしろってことですか?」

「そうだ」

「裏切ったらどうするつもりなんですか」

「その時はリアを殺せ」


 王の一言は残酷なまでに冷たかった。

 

「面白そうだね。私は協力してあげてもいいよ」


 フラウは乗り気だった。

 一方、ロアは渋い顔をしている。

 レーグと同じく魔物の味方をすることに抵抗があるのだろう。


「私の命令に従えないのか?」


 勇者たちは渋々オレの元へと集まってくる。

 本気で戦ってくれるのかは怪しいが、決戦までに何とかなればいいだろう。


「よろしく」

「コンランスさん、よろしくお願いします」

「よろしくねー」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ、魔物だがよろしく頼む」


 こうして、勇者と魔物の五人パーティーが組まれたのだった。


 オレを先頭にして、勇者とオレのパーティーは宮廷を後にした。


 王都を出た直後のこと。

 オレたちは王都外周の平原にいた。


「ところで、コンランスっていう名前だっけ?」


 フラウがオレに聞いてくる。


「あってる」

「あなたってどれくらい強いの?」

「私も興味がありますね」


 ロアもこの話に興味があるようだった。

 確かに、この2人とは戦ったことがない。

 オレの実力を知らなくて当然だ。


「こいつはめちゃくちゃ弱い。オレの相手にもならない程度だ」

 

 答えたのはレーグだった。

 前にこいつに負けたのは本当だが、言い方が不快だ。


「今ならお前を倒せるかもしれないぞ」

「それならやるか?」

「やろうやろう!」


 オレの挑発にレーグが乗り、さらにはフラウが煽ってくる。


「あなたたち、そんなことをしている時間は?」

「一戦だけだから。ロアも協力してくれるよね?」

「全くフラウといったら……」


 フラウのはちゃめちゃ具合にロアは頭を抱えていた。

 ご愁傷様だ。


「私もやるんですか?」

「当たり前だよ。恋愛っていうのは一度亀裂が入った方が強力になるんだよ」

「そうなんですか……」

「そうだよ!」


 フラウがリアに抱きつき、強引に説得しようとしていた。

 リアは少し抵抗したものの、諦めてフラウの抱擁を受けているようだ。


 そんなわけで、勇者対オレの模擬戦が始まった。

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