悪女だった私は善人になることにしました。

@alicemare

1話

「…様、お嬢様」

誰かを呼ぶ声が聞こえる、けど私のことではないか、私はお嬢様なんて呼ばれるような大層な人じゃないんだから。それにしても何だか寝心地がいいな、ふっかふかで気持ちいいなぁ。

先ほどから聞こえていた声が大きくなって、私の体が誰かによって揺さぶられる。

「お嬢様、パトリシアお嬢様」

私はゆっくりと目蓋を開く、そこには見たことのないメイド服を着た女性と光輝くシャンデリアが見えた。

私は目を見開いて、勢いよく起き上がると顔を触った、胸まであった黒い髪は癖の強いハニーブロンドカラーになっていた、そして、手のひらは子供のような小さな可愛らしい手になっていた。

そんな私の様子を不思議そうに見ていたメイドさんは何かを察したのか手鏡を持ってきた。

私は手鏡を受け取り自分の顔を見た、鏡に写りだされた私はサファイアの瞳の幼いながらも顔立ちの整った美少女だった。私が鏡を食い入るように見ていると

「額の傷は浅いのですぐに直るとは思いますが、痛みますか?」

とメイドさんは言ってきた。

私が首を振るとメイドさんはホッとした表情をしていた。

私は額の傷よりも鏡に写る美少女に一つの確信を得た。ハニーブロンドの髪、サファイアの瞳、そして、パトリシアという名前、それはある小説だった。タイトルは覚えてないけど、本が大好きで図書館の司書をやっていた私に友人が貸してくれた小説だ。

その小説は、アリシアという主人公が義姉のパトリシアにいじめを受け、辛い幼少期を過ごすも、婚約者のカイルに出会いお互いに引かれ愛し合い、結婚をして幸せな日々に変わる、しかし長女であるパトリシアは政略結婚で、恋愛結婚をしたアリシアを強く妬む。順風満帆に生活し、子供を授かったアリシアをパトリシアが階段から突き落とし流産させてしまう。物語の最後はパトリシアが処刑され、邪魔者のパトリシアがいなくなりアリシアとカイルは幸せに暮らすそんな話だった。

あれ?ということは私ヤバくない?悪役に転生してしまったってこと?

ん?ってことは私死んじゃったってことだよね、何で?

確かあのときは、図書館で本を整理していたんだけど、本棚が倒れてきて、それで死んだのかな?

って言うか転生って本当にあるだ、何て私が一人頭を整理していたのを見ているメイドさんはきっと、パトリシアの侍女だったアンナのはず

パトリシアの侍女だったっと言うのも、パトリシアはアリシアだけでなく、侍女に対してもひどくいじめていた。そしてアンナはパトリシアに暴力を振るわれた挙げ句の果てには侍女を解雇されてしまう、ある意味解雇されて良かったと思う。

私は恐る恐る侍女に声をかける

「あ、あのアンナ?ですよね?」

侍女は少し驚いた顔をした。あれ?もしかして名前違った?

「お嬢様、怪我の衝撃で記憶が曖昧なのですね、アンナで間違いありませんよ」

アンナであることが分かった今、私は小説の内容を知ってる、パトリシアがどんなに悪い女だったかも、幸いなのはまだ幼少期時代、小説の序盤の方であること、まだ取り返しはつくはず、私がパトリシアの歪んだ根性を叩き直してやらなきゃって今は私がパトリシアなんだった。

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