第22話 そして未来へ
「あぁ、ロゼリア!無事で良かったです……!」
「テイレシアお義姉様ぁ!」
私はやっと会うことの出来た可愛い義妹を胸に抱き締めたのでした。
***
ロゼリアの危機を感じ取った私が王宮に乗り込むと、なぜかフレデリック殿下は地下牢に閉じ込められていてロゼリアといつの間にかお帰りになられていた王妃様が一緒におられました。
「王妃様!いつお戻りになられたのですか?あっ」
驚きのあまりつい素のまま声をかけてしまい、慌てて淑女の挨拶をしようとすると王妃様が私の手をとり優しく微笑まれたのです。
「いいのですよ、テイレシア嬢。フレデリックの件は迷惑をかけてしまいましたね」
「王妃様……」
そして私は事の顛末を聞かされたのです。
フレデリック殿下は廃嫡され平民になるそうで、ロゼリアとの婚約も白紙に戻されました。
可愛いロゼリアがキズモノにならなくて本当に良かったです!
え?なんと私との婚約も実はちゃんと白紙に戻っていたそうです。フレデリック殿下が破棄したと言い触らしていただけらしいですわ。
フレデリック殿下はあの噂通り男性を愛人にしようとしていたそうですが、どうやらその男性にもフラれてしまったようですわ。純真無垢なロゼリアを利用しようとするから天罰が下ったのですわね!
そしてさらに驚いた事が……なんとクリス様が実は商人ではなく他国の王子だったそうなのです。王妃様に言われて私の真意を見極めにきたとおっしゃいました。あと、顔にこんな傷を負っている自分を見た時の街の人の反応も見たかったのだとか。
「テイレシア嬢以外の令嬢を王子妃にするなんて考えられない。と、王妃様に言われまして。だから、あなたがどんな方なのかを自分の目で確かめたかったのです」
クリス様……いえ、クリストファー様はそう言って私の前に跪いたのです。
「あなたはオレが考えていた以上に素晴らしい女性です。もしわずかでも可能性があるのなら、どうかオレの側にいてください」
クリストファー様が行商人ではなく王子だった事にはたしかに驚きました。ましてや王家の養子になり未来の国王になる方だなんて。でも、クリストファー様と一緒にいたこの数日が確かに私の心に安らぎを与えてくださった事の方が重要だったのです。
「わ、私は、義妹が1番大切なのです……」
「わかっています」
「……私はよく可愛げのない女だと言われていました……」
「シシイーノを一撃で倒したあなたに一目惚れしましたので」
クリストファー様は私の手を取り「ただ、オレのような醜い顔の男に嫁ぐのが嫌ならそうハッキリと言ってくれた方が諦められます」と悲しそうな顔でおっしゃったので慌てて顔を横に振りました。
「クリス様は……クリストファー様は素晴らしい方です!私はあなたのように一緒にいて心安らぐ男性に初めて会いました!顔の傷など、なんの問題もありませんわ!あなたは……素敵です」
こうして私はクリストファー様のプロポーズを受け入れ、改めてこの国の第1王子の婚約者になったのでした。
フレデリック殿下の平民落ちと、新たにクリストファー様が養子になられた件が発表されましたが特に混乱などはありませんでした。貴族にはわずかに慌てた方々がいたそうですが(たぶん、フレデリック殿下にすり寄っていた方々だろうと思われます)クリストファー様の有能さが発揮されるとだんだんと声を潜めていきました。
クリストファー様が国王となると法律などを整え、さらに国民たちにとって住みやすい国へと発展していきました。
1番驚かれた新しい法案は、同性での結婚を認めることですかね。そうそう、ロゼリアの遠縁であるアルファン伯爵が男性と大々的に結婚式を挙げた時は国中の女性が黄色い声を上げ、一部の男性が涙したとか……。
まぁ、ロゼリアが喜んでいたのできっと大丈夫です!跡継ぎに関しては養子をもらえばいいですしね。ロゼリアがよく「愛とは自由であるべきなのです!」と叫んでいたのを思い出しました。
あ、ちなみに全然姿を見ないなぁと思っていた国王陛下ですが、なんでもフレデリック殿下を甘やかした罰として王妃様にお仕置きされていました。フレデリック殿下の平民落ちを認める書類にサインしないと離婚すると脅したそうです。まぁ、平民落ちを認めなければたぶん処刑されますしね。命は大切です。なによりどんなに親バカでも王妃様には頭があがらないようでした。
賢者の方々もフレデリック殿下の平民落ちと養子に入ったクリストファー様が新たな王になると聞き、国に戻って来てくれる事になったそうですわ。これでこの国も安泰ですわね。
ついでに報告と言ってはなんですが、あの時あとわずかに迫っていた結婚式の予定は王妃様の采配によりクリストファー様の御披露目発表会にすり替えられていました。フレデリック殿下の事件の騒ぎもあり結婚式のはずだった事はみんな忘れてしまったようですわ。
数年後、私はクリストファー様と結婚し今ではふたりで支えあって毎日を過ごしております。そして私のお腹には新たな命が宿り、ロゼリアが毎日のようにお腹に語りかけに来てくれるのでとても幸せです。
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