第3話 お義姉様至上主義(ロゼリア視点)
「婚約破棄されて追い返されたですってぇ?!」
定例の婚約者とのお茶会に行ったはずの義姉が予定の時間よりかなり早く帰ってきた。その表情は暗くまるで死んだ魚のような目をして悩んでいるように見えたので、かけよって理由を聞くとまさかの答えに思わず叫んでしまったのだった。
***
わたしには素敵な義姉がいます。ええ、とんでもなく素敵な義姉です。大事なことなので2回言いました。きっと義姉に関する試験があれば必ず出る項目ですからね!わたしのお義姉様はせかいいちぃ!!
どれくらい素敵かというとそれはもう3日3晩語り続けても足りないくらい素敵なのですが、お義姉様の素敵なところを全部教えてしまうのは勿体ない気もするのでわたしだけの秘密です。
お義姉様と出会ったのは1年前。わたしの母親とお義姉様の父親が再婚したんです。
父が事故で死んでから、美しい未亡人となった母に言い寄る男はたくさんいたけれどそれに靡くこと無く母は伯爵家をひとりで切り盛りしてました。忙しい母の姿に甘えることが出来ず子供心に寂しく感じたこともありました。
でもそんなお母様がとあるパーティーで運命の出会いをしたんです。ちょっと厳ついけれど優しい性格のその男性は妻を亡くしていて、同じ立場だったふたりはほどなくして惹かれ合うことになりました。
もちろんわたしは大賛成!だってお相手には娘がいて、わたしにお義姉様ができるんだから!ずっと寂しかったから素敵な姉とか憧れます!
実はわたしには、ちょっと人には言いづらい趣味があるんですが聞いてくれます?
それは……殿方同士の恋愛物語なんですけど……どハマりしてます。ぽっ。(現在進行形)
母に甘えられず、寂しかった子供時代。その時にいた数少ない友人のひとりがその系統にハマっていて興味本位で貸してもらった1冊の本が全ての始まりでした。
詳しいことは省きますけれど(こと細かく語ると18禁になってしまいますから)とにかく男女のドロドロした恋愛とはまた違う男同士の純愛に愛の真実を見いだしました。(そんな気分になりました)
そんなわたしはいまや仲間内から〈貴腐人〉の称号を得たくらいです。
え?なんの仲間かって?
そんなの……腐女子による腐女子のための腐女子の集まり〈貴腐人に憧れる会〉の仲間ですよ?
〈貴腐人〉とは、腐女子たちの憧れであり腐女子の頂点に贈られる称号なのです。でも、腐女子ではない一般の淑女の方々から見たらこの崇高な趣味は理解されないこともよくわかっていますけどね。
まぁ、それはおいといて。
お義姉様は腐女子ではないのに、わたしの趣味を受け入れてくれたんです。こんな男と男の肌のぶつかり合いについて2時間は軽く語ってしまうわたしを偏見の目で見ることもなく「あなたは私の可愛い義妹よ」と笑顔で抱き締めてくれるスゴい人なんです!
あの艶やかなしっとりした黒髪も、深緑のような美しい瞳も、しつこくなく爽やかな色気を漂わせるお顔立ちも、素晴らしい!お義姉様が素晴らしすぎて、もう少しで違う愛にも芽生えそうでした。(寸止め)
お義姉様のおかげでわたしは家で趣味を隠すことなくフルオープンで過ごせるのでノンストレス!執筆活動も進みます。
あ、〈貴腐人に憧れる会〉では数ヶ月に1回の間隔で創作物語を発表するんです。もちろん想像上の人物でも実際の人物をモデルにしても大丈夫ですよ。
でも最近は会員の皆さんがいいネタがないと悩んでいるんですよねぇ。どこかに創作意欲を掻き立てるモデルはいないかしら……?
そんな呑気な事を考えているとき、わたしの大切なお義姉様がまさか一方的に婚約破棄されてしまう事件が勃発。
え?しかもあのクソ王子がお義姉様を捨ててわたしと結婚するって言ってる??寝言は寝てから言えって感じなんですけど?!
そしてお義姉様が死んだ魚のような目をしたまま先ほど起こった事を家族の前で語り、わたしとお母様、そしてお義父様の怒りが爆発したのは言うまでもない。
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