chapter2 レイン・アルフォード

Arthur4 プラチナランクの朝

〈「決めたよ。じゃ、無理だ。だから、の力で騎士への切符を掴むよ!〉

〈レイン・アルフォードとして生きる道を選んだか〉

〈僕に絶大の力と英知を!〉

〈うわぁぁあ!〉


               ◇◇◇


「はぁ!」

 最上階にある財閥プラチナ寮の部屋のダブルベットにて、全裸のレイン・アルフォードが目を覚ました。スマホを見てみると六月の第二月曜日の午前六時と表示されていた。

 上半身を起こすと汗まみれの引き締まった胸筋と腹筋が現れる。

「なんだ、夢か。それにしても、太っていた彼は何者だ? まぁ、気にしたら駄目だな」

 一呼吸すると、隣に寝ている赤のツインテールをした豊満な体型で全裸の女子生徒を起こす。

「レイン、おはよう」

 一緒に寝ていた人物は、カリーヌ・マルース。レインの彼女だ。子供の頃から公園や庭で遊ぶほどの関係である。カリーヌは起き上がり、Gカップの胸と美麗な括れを出すと、左手で彼の胸とお腹を触り始める。

「すごい汗よ。大丈夫なの?」

「あぁ、問題ないよ」

「それにしても相変わらず、良い肉体しているわね。細いながらも逞しくてカッコいいわ」

「もう少し体を大きくしたほうが好みかい?」

「ゴリマッチョなんて嫌よ。暑苦しいから。あたしは、理想の体型をしている君が大好きなのよ」

「ありがとう。これからも怠らずに鍛錬し続けて、君にとって大切な存在になってみせるよ」

「うん、期待しているね」

 彼女は天にも昇るような笑みを浮かべて彼に抱きついてきた。

「こらこら、今日は学校だからその辺にしておかないと」

 レインはカリーヌを引き離し、ベットから降りる。クローゼットからハンガーに掛けてある制服を外し、タンスから下着を取り出すと、浴室へと向かう。



 シャワーで体を洗い終えると、脱衣所でタオルで拭く。

「努力した結果の体だ。慢心せずに鍛えていかなくては、でないとアルフォード家の名に傷が出来てしまう」

 レインは、洗面台の鏡で鍛錬を積み重ねてきた肉体を見ながら、決意を込めた声で呟いた。

 アルフォード家は、イギリスの名門財閥でお金持ちの間では名うての一族。伝説の存在であるアーサーの血を受け継ぐといわれる四大騎士家の一つだ。他の三つは、マルース家、ルイン家、キャロル家である。

 彼は次期当主としての自覚と心構えなどを身につける為、アーサー東京本校にて鍛錬と勉学に励んでいる。ちなみに、カリーヌはマルース家の次期当主だ。

 身だしなみを整えると、青のブレザーの制服を着た。ネクタイとジャケットの胸ポケットには学園の校章が描かれている。また、色については聖石ルリック選別の儀にて埋め込まれたものによって決まっている。

 深呼吸すると、カリーヌがやってきて、入れ替わるように脱衣所を出る。



 レインは台所に入ると、朝食の準備を始める。慣れた手つきで、リュビを使った調理器具で卵焼きやみそ汁や鮭の塩焼きといった和食を作り上げていく。

「よし、味は問題無し」

 味見し完成した料理をテーブルの上に載せると椅子に座る。

「あー、朝のシャワーは気持ちいいわね」

 カリーヌが脱衣所から出てきた。アーサー東京本校のブレザーの女子制服を着ており、白シャツ以外は全て赤色だ。

「ごはんが出来たから食べよう」

「うん、そうだね!」

 二人は椅子に座り、朝食を摂る。太陽のオーラを感じさせるカリーヌを見て、レインは微笑む。

(彼女の可愛らしい顔は僕の元気の源だ)

 二人は歯磨きした後、学園が始まる時間までには余裕があるので、ベランダへ出る。 


「やはり、景色を見るのは気持ちいいな」

「同感」

 東京湾を挟んだ向こう側にある都会や、島の北側にはトパーズの力による魔術と機械で完成したアーサーの入口となる大橋であるアーサーブリッジが見える。

 この島のもう一つの入口として南西にある平民ペーパー寮の近くにアーサー港が構えられている。ふたりは数分間、希望と活力を与えそうな朝陽に彩られた絶景を堪能した。



 部屋に戻ったふたりは生ごみの袋を玄関先にあるごみ捨て場へ置いた。財閥プラチナ寮では毎日八時になると業者が回収してくれるのだ。

 手を洗い、タンスの近くに置いてあったカバンを手に取る。中身は昨日のうちに準備してあった。



 レインはカリーヌと廊下に出ると、専用の施錠魔術で扉をロックする。

 二人とも左手を上に向けて、指を鳴らし移動魔術を発動する。

 足元にそれぞれ青と赤の魔法陣が現れ、それに吸い込まれていった。


               ◇◇◇


「着いたな。あるとないとは大違いだ」

「あたしも同じ意見よ」

 レインとカリーヌは東校舎に到着した。周りには魔法陣から他の財閥プラチナ上流ゴールドの生徒が次々と現れ、中へと入っていく。

「おはようございます。レインさん、カリーヌさん」

「おはよう、ジュード」

「カリーヌっち、おはよう!」

「相変わらず、元気ね。あんたは」

 レインとカリーヌが振り向くと、同年齢の緑色の髪と瞳をした美少年のジュード・ルインと黄色のハーフアップと瞳でカリーヌと同じ体型をした美少女、エリー・キャロルがいた。この二人はルイン家、キャロル家の次期当主だ。レインとカリーヌの一階下に住んでいて、部屋に遊びにくることがある。

「そりゃ、そうだよ。だって、週初めの通学だろうがなんだろうが、ダーリンさえいれば問題ないの」

「ちょっと、エリーさん。恥ずかしいですよ!」

 エリーが浮き立ちながら、自分の腕に抱きつかれるジュードは、恥ずかしさなのか面映おもはゆい顔を浮かべている。

 レインは右斜めから殺気を放つ視線を感じた。見てみると、怨嗟えんさの顔つきで睨む下流ブロンズ平民ペーパーの生徒がいた。

 四大騎士家は、社会的階級や学園のカースト制で頂点に立つ財閥プラチナ階級の中でもトップの存在。自分達の幸せな光景が視界に入れば、機嫌が悪くなるのは自明の理だ。

(まずいな。火に油を注いてしまっている。ささっと、入るか)

「ダーリン、大好き!」

 エリーはさらにジュードに絡みついた。

「それぐらいにして、教室に入ろう。後でいくらでも出来るだろ」

「そうですね。では、入りますか」

「よーし、今日も頑張るよ!」

「エリー、静かにするというのも覚えなさいよ」

 カリーヌは大声を出す彼女に注意した。

 レインはトラブルが起きないうちにカリーヌ達と東校舎へ入った。

















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