私のココロの声をきいて。

月夏

第1話 桜

誰かが寒い雪の日に言った。


「生きていればいいことがあるよ。」


「誰だって辛くなることくらいあるよ。」


私には分からなかった。


そんなことも、それを言う人の気持ちも。






「…綺麗……。」


人生15回目の春が訪れた。前までは寒くて肌寒かったけれど、今ではすっかり温かく陽気な空気がする。公園の桜もちらほら咲いていてもう少し日が経てば満開になるのだろう。入学式のときにも散らずに咲いていたらいいなと思いながら私は桜を見つめている。

桜は咲いたらすぐ散ってしまって寂しい気持ちになるけれど、少しの間だから価値があり儚く思えるものなんだとつくづく思う。


今いる公園には人が何人かいて、お花見をしている。

子供連れの家族や、カップル、一人でいる人も来ていて、桜はきっと皆に愛されているんだろうと私は心の中でそう思った。

皆に愛されている、と思った瞬間、ほんの少し淋しくなったのは気のせいだろう。桜に嫉妬をしても意味がないのだから。

そんな私も一人で桜を見ている。見に来たわけではなかったのに、姿が見えてつい見に来てしまった。まぁ、後に用事があるわけじゃないからいいだろう。


「この桜…入学式のときまで散ってなければいいな…。」


私はそう呟き、家へと向かった。桜並木を眺めながら。







そして数日後、入学式の日が訪れた。

私の願いは叶わず、桜はほとんど散ってしまっていた。

何となくそんな気はしてたけれど、まさか本当に散ってしまうだなんてどれほど運が悪いのだろう、私は。


私は外の風景を眺めていたが、周りの人たちはクラスの貼り紙などみて、喜んでいる人がいたり不安な顔をしている人もいる。

友達と同じクラスになれるかどうか、皆は肝心なようだ。


(まぁ、私は関係ない話ね…)


そう心の中で呟きながら、自分の教室へと向かった。



ガラッと音を立て扉が開き、私の一年間の教室へと入った。

人は何人かいて既にグループが作られているところもあったり、そわそわと周りを見渡している人もいる。

やはり、最初は肝心だからだろう。人は第一印象が全てといってもいいほど大事なのだから。

私はそれを自覚していることにも関わらず、周りとは近づかない。

上手くいかないのは今までで経験しているのだから、わざわざ自分から失敗をしに行くことも意味がないことだ。

そんなことを考えているとき、周りはずっと騒いでいて、「友達になろー」とか「お話しよう!」とか言って話している。

そんなことをしても意味があるのかさえ、私には分からない。


(…馬鹿らしい……。)


そう心の中で思っていると、教師がやってきて自己紹介やらこれからのことやら話している。はやく終わればいいのに、と思いながら窓の外へ視線を移した。

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