TURN20:ダークワールドの四天王

 ダークワールドを倒すべく、デュエニウム鉱山へやってきた遊太たち。

「まさか…鉱山の地下深くに…」

「こんなものがあるとはな…」

 彼らの目の前に広がる光景。それは鉱山に不釣り合いな巨大な城であった。

「この城が奴らの本拠地という訳か」

(いよいよラスダンかー流石に緊張するなあ)

 この少年、現実世界からアニメのモブキャラに転生したが、何故か主人公一行の仲間になってしまったタカシ。タカシは前世の記憶を改めて思い出す。


「覇王神竜ボルヴァークの攻撃!!森羅万象終焉砲!!」

「ぐあああああああああああああああ!!!!」


(このままアニメのシナリオ通りに進めば遊太はラスボスに負ける。この運命を変えられるかは…俺にかかっている訳か)

「みんな、この城に入れば後戻りはできないかもしれない。覚悟は出来ているか?」

「当然だ。この命をかけてでも、俺は妹を…春奈を救いだす!」

「アタシも覚悟は決めたわ。遊太、アンタと最後まで共に戦う!逆にアンタが負けるなんてしたら許さないんだから!!」

「えっと…俺も…覚悟は…決めてるっ…!」

「うん!さあ行こうぜ!これが俺たちの最後の戦いだ!!」


(こうしてラスダン『ダークワールドの城』での戦いが幕を開けた)

「侵入者発見!排除せよ!!」

「あ、えっと、俺が!」

「分かった!任せるぜタカシ!!」

(俺はここにたどり着くまでの道中での戦い同様、ボス戦はお前らに任せた!作戦を実行。俺はそれ程強くないモブ兵狩りを担当)


「貴様らが我々の同志を打ち破ったという子供たちか。ならばこの私が相手をしよう」

「アタシが相手よ!」

「タカシはさっき兵士を5人も相手したもんな。今のうちに休んでてくれ」

「…うん」

(そしてボス級の相手は遊太たちに任せることにした!こういうユニークキャラは引き運が異様に強い。前世の記憶ありでも正直モブキャラの俺では勝てそうにない)

「アタシのターン!ドロー!!アタシはマジックカード…」

(うん、基本的には前世の世界でアニメで見たのと全く同じ展開だ。勝利の運命が決まっている戦いに、わざわざ俺が干渉する必要も無い、というのも大きな理由である)

(ちょっと情けない方法な気もするが、これも遊太を助けるため。道中で俺が負けてカードに封印されてしまったら、遊太の死も確定してしまう。何としてでも俺はラスボス戦まで生き残るんだ…!)


 そして激闘の末に…

「どうやら…城の最上階まで来たみたいだな」

「禍々しい気配を感じるわね…」

「春奈…無事でいてくれ…」

(…よし!ラスボスまであと一息だ!ダークワールドの幹部・パワーナインは残り4人。この四人はパワーナインの中でも特に強く、四天王と呼ばれている。確か…アニメではこの廊下を進んでいると、先鋒として四天王の一人目が現れるって展開だったよな。それを大和が倒す)

「………」

 長い城の廊下を歩く一行。

(そしてその後、残りの四天王がラスボスと共に登場。遊太、大和、愛良がそれぞれ一人ずつ相手をするんだったな。そしてその次はラスボス戦だ!!)

「………」

「………ん????」

 違和感を覚えて振り返るタカシ。

「どうしたタカシ?」

「え、あー。いや、何でもない」

(…確かアニメだと廊下のこの場所で四天王が登場したよな??)

 タカシは周囲をきょろきょろ見渡す。が、誰かが現れる気配は全くない。

(何故何も起きない!?アニメとシナリオ違くね!?)

「おーいタカシー!」

「あ、今行く!」

(…ってかこのままだとアニメで残りの幹部たち3人が現れる大広間に到着しちゃうよな?でも幹部はあと4人残ってる…凄く嫌な予感がする…)


 内心では焦るタカシ。そんなことは知る由もない遊太たち。思惑がすれ違う中、一行は長い廊下を歩き続け…

「ここは…大広間か?」

「ただならぬ気配がますます大きくなったな…」

(ついに一人目の四天王と会わずにたどり着いてしまった…)

「フッフッフ!よくぞここまでたどり着いたな!!」

 どこからか男の声が聞こえてきた。

「だ、誰だ!?」

「とう!!」

 四人のデュエリストが姿を現す!

「全ての流れは私の手中に…水王ブルーナ!」

「ダークワールドの頭脳。風王テンペス」

「…闇王マター」

「そして俺がパワーナインの頂点!炎王ブラスト!」

「「我らダークワールド最強の四天王!!!」」

 ドーン!!!

 と、四人が登場セリフを決めると背後で謎の爆発が起きた。

「ダークワールド四天王!?」

「春奈アアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

(うぎゃあ!耳があああ!!大和うるせえっ!!!)

 四天王の一人の小柄な少女を見て叫ぶ大和。

「春奈が何故ここに!?その姿は!?それにダークワールド四天王だと!?貴様ら!!春奈に何をした!?」

「ウフフ。この子は類まれなデュエルの才能を持ち主。だから私が教育してあげたの…我らが総帥ザキダリ様の忠実なしもべとなるためにね」

 青い髪の女性・ブルーナが髪を触りながらそう話した。

「何だと!?貴様!!許さん!!!」

「我ら四天王はダークワールドの中でも最強のデュエリスト!総帥に会うのは我々とデュエルし、勝ってからにしてもらおうか!もっともそれは不可能だがな!」

 赤い髪の熱い男・ブラストはそう言った。

「不可能じゃない!俺たちは絶対に勝つ!!な!!」

「ああ!!」

「勿論!!」

「え、あ、はい」

(えーっと…どうしよう…この展開はもしかしなくても…)

「さて…相手は四人。アタシたちも四人。つまり一人ずつ相手をするってことね」

(ですよねー!今までは何とかヤバそうなのとの戦闘は回避したけど…今回は逃げ場がねえ!ど、どうする!?何かここをしのぐいい手は…)


「切藤遊太!貴様はこの俺!ブラストが相手をしよう!!貴様は我々の同胞を最も多く倒した男。この俺がその敵を討たねばならん!」

「お前たちダークワールドの思い通りにはさせない!勝負だ!!」

DUEL1:遊太VSブラスト


「春奈は俺が相手する!!ダークワールドの洗脳など…俺のデュエルで消し去ってくれる!」

「………」

DUEL2:大和VSマター(春奈)


「そこの一番地味なキミ。私の相手をしてもらおうかしら?」

(しかもまさかの名指しだと!?)

「え…ええ…」

「本当は俺があの女も倒したいところだが…仕方あるまい!おい!奴に負けるという醜態を晒したら絶対に許さんからな!必ず勝て!!」

(しかも責任重大なんですけどー!?)

DUEL3:タカシVSブルーナ


「じゃ、アタシはその眼鏡の男を倒せばいいってことね」

「フッフ。あなたの戦術も運命も…全て計算済みです」

DUEL4:愛良VSテンペス


「決まったな。では決戦の舞台に案内しよう!!」

 ブラストが指を鳴らすと床が四つに別れ、それぞれ別方向に高速移動を始める!

(うおおおおおお!?)


「…ここは?」

 タカシが目を開くと、そこは水中デュエルフィールドであった。周囲には魚も泳いでいるが、何故かフィールド内には空気があるらしい。

(くっそー!四天王とデュエルする羽目になっちまった!どうする!?今までのモブキャラと違って今回はネームドだぞ!?それに…)

 タカシはブルーナの服の開けた部分から露出している胸元を見る。

(で…でけえ…前世の世界のアニメでこいつを見た時もでけえって思ったが間近で見ると更にやべえ…愛良のもデカいがそれ以上にでけえ…って!そんな事考えてる場合じゃないのに!男の本能には逆らえん!!)

「やっと二人っきりになれたわね…私、あなたに聞きたいことがあるの」

「…へ?」

(俺に…聞きたいこと…だって?)

「あなた…普通のデュエリストではないわね?」

「…!?」

「強いデュエリストには特有のオーラがあるのよ。私はそんなオーラを見極めることができる。遊太君や大和君に愛良ちゃん。それに私のお気に入りのマターちゃん。彼らが強い理由はよーく分かるわ。強いオーラを放っているもの」

「強いデュエリストのオーラ…」

「でもあなたにはそんなオーラが無い。見た目もオーラもそこらにいる普通の男の子と全く同じ。しかしあなたは遊太君たちと共に行動し、うちの下っ端程度なら蹴散らせるほどの実力を持っている…あなた、何者なのかしら?」

「…!!!」

(こいつ…俺が他のモブキャラと違うことに気づいている!?転生者ってことまでは気づいていないみたいだけど…)

「………」

「…質問に答える気は無いってことね。まあいいわ」

(かっこいいセリフを返そうと考えてたら無視と捉えられてしまった)

「人心掌握は得意でね…私が勝ったら、あなたを封印する前にちょーっと脳を覗かせてもらおうかしらね…?」

(何それ怖い!?)

「さて…おしゃべりはこれくらいにしておいて…そろそろ始めましょうか。他の四天王たちも始める頃かしら?」

「………」

 二人はデュエルガジェットを構える!


~炎のフィールド~

「さあ!互いの魂を燃やす熱き戦いを始めるとしよう!」

「ああ!行くぞ!!」


~宇宙のフィールド~

「春奈…今助けるからな…行くぞ!!」

「…行く」


~天空のフィールド~

「さっさと終わらせて遊太たちと合流させてもらうよ!」

「フッフッフ…そう上手くいきますかな?」


「「デュエル!!」」

 それぞれの戦いが同時に幕を開ける!


「私の先攻。ドロー!」

(くそ!こんな大事なデュエルに限って先行取られるなんて!)


タカシ

HP:4000 AC:0 手札:4枚


ブルーナ

HP:4000 AC:3 手札:5枚


「まずはこのカードから行きましょう。マジックカード『暴走コンプレッサー』!自分のデッキの上からカードを5枚墓地へ」

 デッキの上から5枚を捨てるブルーナ。そして墓地に送ったカードを確認する。


AC:3→2

『暴走コンプレッサー』 マジックカード

自分の山札の上から5枚のカードを墓地へ送る。


「続いてマジックカード『ルアーストリーム』を発動。墓地から攻撃力500以下の魚類モンスターを5体まで召喚できる…私が召喚するのはこの5体!」

 ブルーナは墓地にある5枚のカードをタカシに見せつける!

(暴走コンプレッサーで墓地に落ちたのは全て攻撃力500以下の魚類モンスター…!やはりユニークキャラ!こいつも詰め込みレベルの引き運か…!)

「さあ現れなさい雑魚たちよ!リトルブラックフィッシュ2体とリトルレッドフィッシュ3体を召喚!」

 赤と黒。小さな魚たちの群れが現れる!


AC:2→1

『ルアーストリーム』 マジックカード

自分の墓地に存在する下級の魚類モンスターを5体まで選び、召喚する。


『リトルレッドフィッシュ』

下級 タイプ:水 分類:魚類 攻撃力:500 防御力:100


『リトルブラックフィッシュ』

下級 タイプ:水 分類:魚類 攻撃力:100 防御力:500


「リトルブラックフィッシュの効果発動。自分フィールドにリトルブラックフィッシュ以外の攻撃力500以下の魚類モンスターが3体以上いる場合、1枚ドローできる。ブラックフィッシュは2枚いるから当然効果も2回使えるわ」

「くっ…」


ブルーナ手札:3→5枚


「ふふ。まだまだ行くわよ。私はリトルレッドフィッシュ2体とリトルブラックフィッシュ1体の3体でエクストラゾーンを展開!」

 魚モンスターたちがデュエルガジェットに飛び込むと…海の中より大量の魚が集まってくる!

「さあ!愚かな雑魚たちよ!群れを成して竜へと生まれ変われ!エクストラ召喚!!」

 魚群はやがて巨大な竜へと姿を変え、タカシの目の前に現れる!

「現れよ!ドラ・ギョグーン!!」


『ドラ・ギョグーン』

エクストラ タイプ:水 分類:ドラゴン 攻撃力:1000 防御力:2000

召喚条件:水タイプ魚類下級モンスター×3


「ドラ・ギョグーンの効果発動!1ターンに1度、エクストラ素材カードを1枚を墓地へ送り、2枚ドローする!」

(また手札を増やしてきたか…!)


ブルーナ:5→7枚


「手札のシャーク・ドラゴンの効果発動!」

 すると海の底からサメのような外見のドラゴンが現れ、場に残ったレッドフィッシュとブラックフィッシュに喰らいつく!

「雑魚は強者の糧となる…それは海の摂理。シャークドラゴンはフィールドの下級魚モンスターを2体破壊することで、コスト無しで召喚できるわ」


『シャーク・ドラゴン』

中級 タイプ:水 分類:ドラゴン 攻撃力:1800 防御力:1500

効果:このカードが手札に存在する時に、フィールドの下級魚類モンスター2体を破壊して発動できる。このカードをAC無しで召喚する。(進化元モンスターが無くても召喚できる)


「裏側カードを1枚出してターンエンドよ」


AC:1→0

裏側カード:1枚


「…!」

(先行1ターン目からエクストラモンスター1体に中級モンスター1体、さらに裏側カードまである上に手札は5枚で全然減ってないだと!?)

 タカシはこれまでに戦ったデュエリストの事を思い出す。

(今まで戦ったデュエリストは手札全部使い切って上級出してハイ、おしまい!みたいなパターンが大半だった…だけどこいつは違う!動きがガチな上に引き運まで強すぎる…!間違いなく今までで最強の敵…勝ち目はあるのか…!?)

「さあ、次はあなたの番よ。オーラを持たない者がどうあがくのか…たっぷり見せてもらうわよ。フフフ…」

 ブルーナは不気味にかつ美しく笑う…


To be continued…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る