デュエルオムニバース外伝~害悪陰キャデッキ使いオタク君、デュエル世界に転生する~
@toriken
TURN1:たかし死す
カードを集めて作ったデッキを用いて対戦をする『トレーディングカードゲーム』。その中でも日本で特に人気が高いのが『デュエルオムニバース』だ。その歴史は20年以上。漫画やアニメも展開されており、子供から大人まで幅広く遊ばれている。
「それではデュエルオムニバース公認大会決勝戦、ハシキング選手対ツトム選手の対戦を始めますー」
東京都某所のとあるカードゲーム専門店。雑居ビルの一室にある小さな店内にて、机を挟んで椅子に座って向かい合う二人の男。一人はスポーツ刈りで眼鏡をかけた中学生。もう一人は小柄で小太りな眼鏡をかけた20代の男だ。
「「最初はグー、じゃんけんぽん!」」
「じゃあ先行もらいます」
「了解す」
二人の様子をギャラリーが見守る中、デュエルオムニバースによる対戦…デュエルが幕を開けようとしていた。
「それでは決勝戦、デュエル開始―!」
「よろしくお願いします」
「おねしやす」
さて、デュエルオムニバースのルールについて説明しよう。
40枚のカードを集めて作った束…デッキをシャッフルして裏向きにしておく。じゃんけんで『先攻』『後攻』を決め、互いにデッキを上から4枚引く。引いた4枚のカードは『手札』と呼ばれ、このカードを用いてデュエルは行われる。
「俺のターン、ドローもらいまーす」
準備が終わったら、まずは先攻の番。今回は中学生のツトム選手が先行だ。
その番のプレイヤーはデッキの上から1枚カードを引いて手札に加える『ドロー』を行う。そして
ツトム
HP:4000 AC:3 手札:5枚
ハシキング
HP:4000 AC:0 手札:4枚
「まずは炎の幼竜を召喚!」
手札にあるカードはACを一つ取り除くことで、机の上…『フィールド』に出すことができる。ツトム選手がまず最初に出したのはモンスターのカードだ。
AC:3→2
『炎の幼竜』
下級 タイプ:炎 分類:ドラゴン 攻撃力:1500 防御力:700
モンスターはそれぞれ「クラス」「タイプ」「分類」「攻撃力」「防御力」が書かれている。どれもこのゲームにおいて重要な要素だ。
「さらにヒヨコルピアを召喚!」
AC:2→1
『ヒヨコルピア』
下級 タイプ:炎 分類:鳥獣 攻撃力:100 防御力:500
ヒヨコルピアは炎の竜と比べると攻撃力や防御力が低いモンスターだ。しかし…
「ヒヨコルピアの効果使います。1ターンに一度だけ、炎タイプのドラゴンが進化召喚を行う際に払うコストを0にします。その効果で炎の幼竜を火炎の竜に進化召喚!」
ステータスが低い代わりに強力な効果を持ったモンスターも多いのだ。
そして『中級』と書かれたモンスターはタイプ・分類が同じ下級モンスターの上に重ねる『進化召喚』を行うことで出すことができる。中級モンスターは下級よりも高いステータスを誇る。
『火炎の竜』
中級 タイプ:炎 分類:ドラゴン 攻撃力:2000 防御力:1400
「さらに火炎の竜を
さらに中級モンスターの上に更に重ね進化召喚することで、非常に高いステータスを持つ、上級モンスターを召喚することができるのだ。
AC:1→0
『
上級 タイプ:炎 分類:ドラゴン 攻撃力:3000 防御力:2500
「先行は攻撃できないんでターンエンド!」
ACが0の場合はこれ以上カードを場に出すことはできない。先行は攻撃も行えないのでツトム選手の番はこれで終了だ。続いて後攻、ハシキング選手の番が始まる。
「ターン貰います1ドロー」
(蒼炎の銀竜、デュエルオムニバースアニメのライバルの一人『海原竜人』のエースカードとしてお馴染み。海原の人気に加えて初心者にも扱いやすいことから蒼炎の銀竜デッキも人気が高い。だが…)
ツトム
HP:4000 AC:0 手札:1枚
フィールド:蒼炎の銀龍 ヒヨコルピア
ハシキング
HP:4000 AC:3 手札:5枚
「クイックコール、ヨブゲロゲ捨ててリボンゲロゲで」
ボソボソと早口小声で言いながらハシキング選手が場に出したのはマジックカード。モンスターと違って戦闘力は持たないが、デュエルを有利に進める効果を持っている。マジックカードを場に出す際にもACを支払う必要がある。
AC:3→2
『クイックコール』 マジックカード
自分の手札を1枚捨てる。そうしたなら、自分の山札から好きな下級モンスターを1枚選んで手札に加える。
山札からカードを加えたらシャッフルを行う。そして使い終わったマジックカードや、効果で捨てたカードはフィールドの右下にある墓地に送られるぞ。
「リボンゲロゲ召喚、効果発動でヨブゲロゲ蘇生。さらにヨブゲロゲの効果でドロゲロゲを召喚、ドロゲロゲの効果で1ドロー」
AC:2→1
『リボンゲロゲ』
下級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:100
効果:このモンスターが場に出た時、自分の墓地にある名前に『ゲロゲ』と付く下級モンスターを1体選び、召喚する。(このターン中にリボンゲロゲの効果を既に使っている場合、この効果は無効となる)
『ヨブゲロゲ』
下級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:100
効果:このモンスターが場に出た時、自分の山札にある名前に『ゲロゲ』と付く下級モンスターを1体選び、召喚する。(このターン中にヨブゲロゲの効果を既に使っている場合、この効果は無効となる)
『ドロゲロゲ』
初級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:100
効果:このモンスターが場に出た時、場に水タイプの爬虫類モンスターが2体以上いるなら、自分はデッキから1枚ドローする。(このターン中にドロゲロゲの効果を既に使っている場合、この効果は無効となる)
ちなみにACを払うのは手札からカードを出した場合のみ。手札以外から場に出す時や既に場に出ているカードの効果を使う場合はACを払う必要は無いぞ。
「1枚裏側で出します」
AC:1→0
また、手札にあるカードをすぐに使わずに裏側にして出すこともできる。裏側で出すのにもACはかかるが、一度出しておいたカードは次のターン以降、コストを支払わずに使うことができるのだ。
「さらにゲロゲモンスター3体で沼地の支配者ゲロゲロックをエクストラ召喚」
デュエルオムニバースでは40枚のデッキとは別に、10枚まで『エクストラカード』と呼ばれるカードを使うことができる。エクストラカードはそれぞれのカードに記された条件を満たすことで重ねてエクストラ召喚できるのだ。こちらもAC無しで出せる。
『沼地の支配者ゲロゲロック』
条件:水タイプ爬虫類の下級モンスター3体
エクストラ タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:1500 防御力:1800
効果:1ターンに一度、このカードの素材モンスターを一つ捨ててもよい。そうしたならマジックカードまたはカウンターカードのどちらか一つを指定する。次の相手ターンの終わりまで、互いのプレイヤーは選ばれたカードを発動できない。(このターン中に沼地の支配者ゲロゲロックの効果を既に使っている場合、この効果は発動できない)
「リボンゲロゲ捨ててゲロゲロックの効果、マジックで」
「あ、了解です!」
エクストラモンスターの中には召喚するために重ねたモンスターを取り除くことで効果を発動できるものもある。ちなみに身体中にコブのある外見と手に持ったギターが特徴的なカエルモンスター『ゲロゲロック』は相手の戦術を封じる、いやらしい効果の持ち主だ。
「バトル入ります。ゲロゲロックでヒヨコルピアを攻撃」
「うーん、受けます!」
沼地の支配者ゲロゲロック:攻撃力1500 ヒヨコルピア:防御力500
ツトム選手HP:4000→3000
手札のカードを使い終えたらバトルに突入。モンスターで相手のモンスターを攻撃だ。攻撃側のモンスターの攻撃力が防御側のモンスターの防御力を上回れば、その差の分だけ
攻撃で相手のHPを削っていき、0にすることができればデュエルに勝利できる、という訳だ。
「エンドで」
「俺のターン!ドロー!」
ツトム
HP:3000 AC:3 手札:2枚
フィールド:蒼炎の銀竜
ハシキング
HP:4000 AC:0 手札:2枚
フィールド:沼地の支配者ゲロゲロック
裏側カード1枚
(うーん…俺の手札は『蒼炎の銀竜』と『天使の豊札』の2枚。『天使の豊札』を使って手札を補充するつもりだったのにロックされたのきっついなー。2体目の蒼炎はこの手札じゃ出す手段も無い。相手の裏側カードも怖いけどブラフって可能性もあるし他に出せるカードも無いし…)
「そのままバトル入ります!蒼炎でゲロゲロックを攻撃!」
「ミラバリ…蒼炎破壊で…」
ハシキングがニチャア…と気色の悪い笑みを浮かべながらカード発動宣言をした。
「あー、やっぱそうだよなあ…」
ハシキング選手が伏せていたのは『カウンターカード』であった。他のカードと違い条件を満たすことで相手ターンに発動できる、その名の通りカウンターを狙えるカードなのだ。
『聖なる結界 ミラーバリア』 カウンターカード
相手モンスターが攻撃してきた時に発動できる。攻撃を中断し、攻撃モンスターを破壊する。
「っー!ターンエンドで!」
「ターン貰いますドロー」
ツトム
HP:3000 AC:3 手札:2枚
ハシキング
HP:4000 AC:3 手札:3枚
フィールド:沼地の支配者ゲロゲロック
「手札からリボンゲロゲ召喚。効果で墓地のヨブゲロゲ召喚。ヨブゲロゲの効果でドロゲロゲ。さらに効果で1ドロ」
「さっきと全く同じ流れということは…」
「水タイプ爬虫類3体でエクストラ召喚、ゲロゲロック2体目。さらに効果発動マジックで。そのままバトル入ります。2体のゲロゲロックで攻撃」
「うーん!通します!」
ツトム HP:3000→1500→0
モンスターが場にいない場合、攻撃したモンスターの攻撃力分のHPが減ってしまう。2体のゲロゲロックの攻撃が命中し、デュエルの決着が付いた。
「ありがとうございましたー!」
「あざしたー」
(うーん…愉悦!やはりデュエルオムニバースは最高だ!)
カード大会が終わった帰り道。ハシキング選手…本名『高橋たかし』はニヤニヤと笑みを浮かべていた。
(勉学・スポーツ共にダメ、しかもぼっちコミュ障、顔面偏差値も最低レベル。さらに大学受験も就職も失敗し絶賛ニート中。そんな最低ダメ人間な俺だが、デュエルなら勝利と言う名のマウントを取ることができる!!)
「くっくっく…」
(特にロックデッキは良いものだ。相手の戦術をあの手この手で封じ、一方的に勝つ!戦術を邪魔され苦しむ対戦相手の様を見るのはまさに…快ッ感ッ!)
勝利の余韻に浸っていた…その時であった。突如クラクション音が間近で鳴り響く。
「…は?」
たかしが異変に気付き振り向こうとした瞬間、身体が衝撃と共に吹き飛ばされ、意識も遠のいていく。
東京都某所で交通事故が発生。アクセルとブレーキの踏み間違えにより、自動車が歩行していた男性に衝突。男性はまもなく死亡したという。
こうして高橋たかしの『この世界での人生』は唐突に終わりを迎えた。
To be continued…
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