クラフトゲーに転生したと思ったら乙女ゲー世界でした。悪役令嬢はクラフトゲー能力者に攻略されたがってるっす!
はとむぎ
0章 読み飛ばしもアリかもだけど、読んでくれると嬉しい
プロローグ
それは望郷か、あるいは悔恨か。かすかに残る記憶、もとい記録の中で、最も豊かで平和であった
終末論者は、永遠に幸せな夢をみる。
ドーム状の建物。つるりとした屋根の上。
「108度目の"終末"予想……」
「"干渉"しない場合の滅亡確率は40%」
対話をしているようだが、二つの声は同じ声にしか聞こえない。
「流れにゆだねるには、高すぎる確率だ」
「750万回の試算から、候補ナンバー42が最大の"変動率"を示しました」
彼の、彼女の視線の先には、疲れた顔で列車に揺られる一人の男。
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規則正しく奏でられる走行音。市内を走るローカル列車内で一人の少女が携帯ゲームを遊んでいる。
(さぁて、いよいよ断罪イベントっすよぉ)
心の中で独り言をこぼしつつ、少女は携帯ゲーム機を握りなおす。これが列車内でなく自宅であれば、少女はおそらく口に出していただろう。
液晶画面には、キャラクターの腰から上の立ち絵が並び、会話が行われるタイプのゲーム、いわゆるアドベンチャーゲームの場面が映し出されている。
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レクスリー・オーム・アディテア
「ヴィライナ! お前が行った数々の悪事、既に明らかとなっている!」
ジャス・フェリサ・フルエンズ
「水練の授業では、閃力でアトラ嬢の脚を引き、溺れさせようとしましたね?」
ルアシャ・モヌーク
「白鱗ダンジョン探索時、ならず者を雇ってアトラ嬢を襲わせた証拠も押さえている」
リウス・ナウレジャ
「更には、アトラ嬢毒殺を目論み、食堂の職員を脅して致死性の毒薬を混入させましたね?」
ヴィライナ・プラマ・チャンドラ
「あ、あれは違いますわ! まさかそんな危険な毒だなんて……」
ジャス・フェリサ・フルエンズ
「ふっ、ボロがでましたね」
レクスリー・オーム・アディテア
「これだけの証言、証拠が挙がっている。衛兵! ヴィライナを引っ立てろ!!」
ヴィライナ・プラマ・チャンドラ
「あぁ、そんな……、お、お待ちください、わ、私はただ……」
ルアシャ・モヌーク
「大人しく縛に付け」
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(はいはいー、ラスボスはよはよ)
少女はコントローラーのボタンをポチポチと連打する。それに合わせて液晶画面の会話はとんとん拍子で流れていく。
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衛兵
「チャンドラ公爵令嬢 ヴィライナ様。貴女を拘束させていただきます」
ヴィライナ・プラマ・チャンドラ
「い、嫌……」
ヴィライナ・プラマ・チャンドラ
(なぜ私がこのような目に。ありえないありえないありえないありえないありえないありえない!! あの女だ! 全てあの女が!!)
ドドドドドドドドドドドドドド
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画面には黒い奔流が
(初見の時は、詰みかけたっす)
彼女がプレイしているこのゲーム『ラブレス・オブリージュ』は、女性主人公の恋愛アドベンチャーゲームだ。キャッチフレーズは「人は愛なき義務を生きられるのか」。
貴人の果たすべき義務と愛、その間を揺れ動く人々の情愛をテーマとしている。などと謳っているが、要するに貴族っぽい登場人物が出てくるだけ、というのが実態である。
このゲームが良くも悪くも"ネタ"とされる原因は、この"ラスボス戦"にある。ここに至るまでは、ほぼアドベンチャーパートのみで展開しておきながら、ラスボス戦は唐突にタクティカルシミュレーションゲームになるのだ。補足するならば、一応ゲーム中に一度だけ、練習ステージらしき展開はあるが、難易度が段違いだ。ラスボス戦は初見殺し上等の鬼畜難易度である。
(勝手がわかれば、ラスボス戦恐るることもなし!)
戦いの舞台は学園の庭園。その庭園に巨大な黒竜が出現する。
相対するのは
ここでまともに戦ってはいけない。幸か不幸か
(このメーカ、絶対"難易度"の意味をはき違えてるっす)
既に何度も周回している少女にとっては、この"くそゲー"と称されるラスボス戦も、ただの消化試合である。
ヒロインキャラでバフを積み、ひたすらにラスボスの攻撃を回避する。
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「アトラ一人に戦わせておけないだろ!」
「争っている場合じゃない!」
「俺たち!」
「皆が!」
「力を合わせるんだ!」
仲間たちの想いに、意志持つ武器である"白鱗"が応える
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(やっと5ターン経ったっす)
これまで画面にはラスボスとヒロインキャラの2ユニットしか存在しなかったが、一気に仲間キャラ4ユニットが登場した。
(初めてクリアしたときは、演出も相まってテンションマシマシだったっすけどねぇ~)
その後はスムーズにラスボスを削り、駆逐した。
(よっし! これで逆ハースチル、ゲットだぜ!)
心でガッツポーズを決める少女。ちなみに、彼女はこのゲームを既に一度コンプリートしており、これは二度目のコンプリート向け周回である。
「──」
「?」
もはやエンディングスタッフロールまでスキップで飛ばし、作業的に周回をこなす少女は、ふと何かの声を感じ取り、視線を上げた。
列車の車窓から見えるのは、ビル群の中で少々異彩を放つドーム状の建造物。"中央府"と呼ばれている施設だ。
"中央府"駅に停車した列車から、少女は何かに導かれるようにふらふらと降車した。彼女の後ろには、同じく降車するくたびれたサラリーマンが居たことには気が付かずに……。
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