第4話
back or enter④
細田が考え込んでいる。
「矢吹さん…ハゲはやっぱりダサいですか?」
「急になんだよ」
俺はデスクでガンダムを作っている。
「俺…薄いんですよ…」
俺は手を止めて振り返り細田の頭を見た。
細田の頭は散らかっていて地肌が見えている。まだ、二十代前半なのに頭が寂しそうであった。
「整えてみたら?」
「天パーだからまとまらないんですよ…」
俺はしばらく考えて、細田のおでこの少し上にマジックでラインを入れた。
「なんすかこれ?」
「そのラインから上は細田じゃない」
「何いってんすか?」
「だからぁラインから上は他人なんだよ!そう思えば恥ずかしくないだろ?」
「完全に俺ですよ」
「鏡見てみろよ…他人だからさぁ」
細田はトイレに行った。
しばらくして戻ってきた。溜め息をついている。
「これで細田の悩みは解決だな」
「しないでしょ?やっつけ仕事じゃないですか!」
「やっつけ仕事じゃないよ!毛が生えた位じゃ面白くないじゃん!ラインから上に名前つけろよ上田さんだな!」
「矢吹さん…さっきから笑いを堪えてませんか?」
「堪えてねぇよ…そんな事より細田!上田さんに失礼だぞ!どうみても上田さんは五十代だもん!先輩だぞ!」
「めっちゃバカにしてませんか?」
「寄生獣みたいでかっこいいじゃん!」
「ミギーっすか!あれは右手だからカッコいいんですよ!しかも、上田って名前がダサいでしょ」
「細田はかっこつけたいのかよ?」
「カッコいいのが良いです」
「ヤンキーヘッズってどうかな?」
「違いますよ!上田さんの名前じゃないですよ!なんで頭を別人にする前提なんですか!」
「カッコいいとかカッコ悪いとかは見た目じゃないぞ!細田のキャラはかなり美男子じゃん!あれが細田の本心なんだから何も変わる必要ないぞ…と、思うよ」
「そうっすかね…門の小僧寿しに可愛い娘がいて…」
「マジで?後で行ってみよう!」
「やめてくださいよ」
「なんでだよ!見たいじゃん!そして、お喋りしたいじゃない」
「だって…」
「お!好きなのか?」
「まぁ…好きというか」
「だったら簡単に知り合えるぞ!バイトしちゃえ」
「え!」
「その娘のシフトと同じ日にバイトすれば絶対に会話できるよ」
「矢吹さん!あざっす!」
細田は握手してきた。
俺も肩をポンポンと叩いた。
翌日ー。
細田は小僧寿しの面接に落ちた…。
俺はニューエラの帽子を買ってあげた。
細田はBboyの道を歩み始めた。なんでもかんでもインを踏んで喋るようになり、めんどくさい方向へと進み始めたのだった。
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