第7話 仲間たち
名前:ノア・ホワイトフィールド
職業:魔物使いレベル3
スキル
剣技レベル99
体術レベル88
基礎魔術レベル43
雷魔術レベル45
回復魔術レベル26
魔物捕獲レベル3
魔物調教レベル3
魔物言語理解
魔物言語理解
自身が捕獲した魔物の言葉を理解することができる。
「……」
慌てて《
レベル3になって初めて覚えるというのも不思議なものだけれど。というか、これはスキルレベルないのか。まぁ魔物捕獲と魔物調教についても、レベルがある必要性があるのか分からないけれど。
そして、僕の前には饒舌に喋るミロと、恭しく礼をするギランカ、加えて新たに仲間となったオーガがいる。
「はんっ。新しくご主人に従うことになったからって、調子に乗んじゃねぇぞ。俺が一番先輩なんだからな」
「お、おで、下っ端……よろしく……!」
「主のご意向に添い、然るべき戦果を挙げることこそが我らの務め。貴君も全力を果たすように」
「おで、が、がんばる……」
こいつら、こんな風に話してたのか。たまにグルルキキィって言ってたのこんな会話だったのかよ。初めて知ったよ。
というか、普通の魔物もこんな風に話しているのだろうか。
まぁ、僕としては数少ない仲間と、まともに意思の疎通が取れるようになっただけありがたいと思うべきだろう。
「ミロ、ギランカ。あまり虐めるな」
「別に虐めてねぇよ、ご主人」
「我は主の意向に従うのみにございます、我が主。お言葉をいただけるだけで心より感謝を」
「ごしゅ、ごしゅじん、したがう……!」
オーガを《
でもチャッピーて。そんな愛犬につけるような可愛い名前でいいのかよ。
「とりあえず、先に進むよ。昼間のうちにしっかり進んで、見通しのいい場所で野営をするからね」
「あいよ」
「承知」
「う、うん……」
今まで僕がミロとギランカに声をかけたとき、常に「グルル」「キキィ」と言っていたが、実際のところずっと言っていたのだろうか。
それならむしろ、今まで分かってやれなかったことを申し訳なく思ってしまう。彼らはこんな風に、僕に話しかけていたのかもしれない。
なんとなく、仲間だなぁ、とほのぼのしてきた。
先頭をミロに進ませながら、僕を中心に最後尾がチャッピーという形である。ギランカは僕の右隣で、周囲の警戒だ。
ミロが先頭からチャッピーに、「ご主人に敵一匹も通すんじゃねぇぞ新入り!」と叫んでいる。
うん、きっと少々口は悪いけれど、僕を守るために全力を賭してくれているわけだ。そう考えると、なんだか嬉しく思えてくる。最近仲間になったばかりだけれど、心からの忠誠を感じるから。
「我が主」
「ん? どうしたの、ギランカ」
「ようやく、このようにお話できることを嬉しく思っております。我が忠誠を、心より我が主に捧げまする」
「う、うん。ありがとう」
なんだか、持ち上げられてちょっとこそばゆい。
この調子で、色々な魔物を仲間にしていくと、それぞれ個性があるのかな。乱暴なミロに、なんだか騎士のようなギランカ、おどおどしているチャッピーみたいに。
そんなギランカが、真剣な眼差しで僕を見た。
「我が主は、他の魔物を仲間にできる力をお持ちですな」
「あ、うん。そうだよ。実際それでギランカ仲間になったしね」
「では一つ。我の心よりの願いがございます」
「どうしたの?」
主か、なんかそう言われると、そんな気分がしてくる。王様みたいな。
「我は、騎士になりとう存じまする」
「騎士?」
「左様。騎士とは、騎乗して戦う戦士のこと。我もいずれは、騎乗して戦う未来を求めております」
「あー……」
ゴブリンライダーのことかな。
何か狼のようなものに乗っている、ゴブリンの中では相当な手練れだ。機動力を持っているゴブリンが一度に襲いかかってくるので、割と苦戦するという話も聞く。僕は一撃で倒せるけど。
「ゆえに……我の乗ることのできる魔物を、主に仲間としてほしいと。それが我の願いでございます」
「ああ、なるほどね。いいよ、それくらいなら」
「ありがたき幸せ」
ギランカでも乗れる大きさとなると、やっぱり狼とかになるのかな。さすがに馬は大きすぎるだろうし。
狼でも、ちゃんと魔物の狼を仲間にしないと。動物の狼と魔物の狼は、その生き方からして全く違うのだ。魔物の狼は何も食べることなく、攻撃的で人間を襲ってくる性質がある。
このあたりにいる魔物となると、
「おいチビ! 何てめぇ勝手にご主人に願いとか言ってんだよ!」
「我が忠誠を捧げる代償である。貴様に云々言われる必要はないぞ、でかいの」
「俺ぁミロだ!」
「ならば我もギランカ・ドラン・エルベート・グリフィッサムである」
「名前長ぇんだよ!」
騒がしく、ミロとギランカが喧嘩を始める。
今までも何度か諍いあっていたけれど、そういうことか。直情型のミロに対して、冷静なギランカがあしらう、という形で喧嘩が行われていたらしい。
そんな彼らが諍いを起こしていることすら、嬉しく思えてくる。今までずっと、一人きりだったから。
僕のことをそれほど考えてくれるというのが、嬉しい。
「おや……?」
そんな風に進んでいるうちに。
森が一旦拓けて、草原が見えた。まだ森の向こう――隣国には辿り着いていないはずなのに。
そこにあったのは、村だった。
魔物避けだろう大きな柵で、全体を囲んでいる村だ。その柵の隙間から見えるのは、寂れた農村という風景だった。
老人が畑に種蒔きをしながら、道で老婆が二人話をしている。さらにその近くを通るのもまた老人であり、若者の姿は見えない。
すると、そんな老婆がはっ、と目を見開いた。
僕と目が合って。
「きゃああああっ!! 魔物よ! 魔物が来たわ!」
「あ……」
僕の前にいるのはミロ。後ろにいるのはチャッピー。横にいるのはギランカ。
どう考えても、魔物の一群が襲ってきたように思えるのは当然だ。畑の老人たちも急いで家に逃げ込み、そのまま出てこなくなった。
だが、それだけだ。
自警団らしい者も出てこないし、特に武装した兵が出てくるとかもない。ただ、家の中に逃げ込んだだけである。
仕方なく、村の周囲を歩く。
小さな村だ。戸建が十ほど並んでいるだけで、残りは農地といったところか。
何人暮らしているのかは分からないけれど、牛も二頭ほど姿が見える。少し離れたところから、鶏の鳴き声もしてきた。
恐らく、自給自足で暮らしているのだろう。
そして、ようやく村の入り口らしい門に辿り着くと。
「むっ!?」
「あ……」
「魔物かっ!?」
その入り口で、恐らく門番のようなものをしているのだろう、若い女の子がいた。
白い肌をした、僕よりも年下だろう女の子だ。十五、六歳といったところだろうか。日に焼けた赤毛を後ろで一つに括っただけの、可愛らしい女の子である。強いて言うならば、両耳がぴんと尖っていることが特徴だろうか。
僕も割と長いこと旅をしてきたけど、初めて見た。
エルフだ。
先程逃げていった老人たちも、もしかしたらエルフだったのかもしれない。ということは、ここはエルフの隠れ里といったところか。
もっとも、そんな可愛らしいエルフの女の子は、僕の姿を見た瞬間にその両手に持った弓矢を構え、その鏃を向けているのだけれど。
さすがに、僕を殺す気満々すぎる。
「ちょ、ちょっ……!」
「また来たか! 死ねっ!」
「僕の話を聞いてくれないかな!」
「むっ!? ま、魔物が話をしているだと!?」
女の子は僕の言葉に驚きを隠そうともせずに、目を見開いて。
僕、ミロ、ギランカ、チャッピーを連続で見る。まるでカクカクと首が動く人形のようにも見えた。
魔物と一緒にいる人間がいるわけない。つまり僕も魔物。でも魔物は言葉が通じない。でも言葉が通じる。なら人間。でも魔物と一緒にいる人間が――というループに陥っているのだろう。
鏃を僕に向けたままで、女の子はじろじろと僕の姿を確認しているらしい。どこをどう見ても人間だよ僕。
「き、貴様は、一体……!?」
おや。
この質問は前にもされた気がする。
ならば僕も、華麗に答えようじゃないか。
「僕は、魔物使いノア・ホワイトフィールドだ」
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