詩のコップ
水上 瓜 (胡瓜)
あいまい
まだ十五時なのに
風船のような意識が 飛んでいきそうで、
目的の五駅前で目を閉じた
手の中から離さないようにしていた 風船の紐が
するする、と ぬけていく感覚に
抗えず、呆然として、
手のひらは紐をみつめる
指先から、少しずつ呆ける私がひろがって
よりかかっている壁との感覚にしか
私が居ない気がした
きっと、もう目的の駅は過ぎてしまって、
正直あまり興味のない流行りの映画は
はじまってしまうだろう。
小さい頃、大きい水色に奪われてしまった
あの、きらきらした、赤い風船のような
計画を立てたくて、
でも、周りを気にしたものしか立られなくて、
あの頃の純粋な好奇心とか
消えてしまっている。
この不確実な輪郭をもつ
“わたし”という概念が
不安定にも、誰かの目に見えて存在している
それが不思議で
呆けた私は眠気と一緒に
車内を舞っているようだった。
「もう解放してくれ」
そう思った時、
舞は終わり
私は終点の駅で起こされていた。
詩のコップ 水上 瓜 (胡瓜) @minami-riu
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