第43話 エクレア(前編)
教室の窓際、一番後ろの席で俺は机に突っ伏していた。
今日は眠くてたまらない。
あー……眠い。
ぽつ、ぽつ、と雨の音がする。
学校に来る時は結構降っていたけれど落ち着いてきたか。
雨の日の俺は何でかだるくて、眠い感じがしてならない。
しかし俺の腕や顔の下にある教科書やノートがそうも言ってられないと言っていた。
……テストも雨で流れてしまえー。
学期初めの実力テスト中の今、俺はもうへとへとだ。
外に見える白くて、灰色の落ちる雨を横に見る。
ぺた、とつけた俺の頬の下には覚えなければならない教科書の文字達。
……雨みたいに染み込んでくれたらなー。
またも、そうも言ってられないので教科書を引きずり出してそのまま読む。
昨日もいつものテスト前一夜漬けをしてしまったから眠いと自分でわかっている。
「ふぁー……っ」
駄目だ、
雨を見てるとそうなるよな、なんて一度も思った事がないのに言い訳にしてみたりして。
……やっぱ俺が行けばよかったかねぇ?
そう思った時、がら、と教室の扉が開いた。
すでに同じクラスメイト達はテストのために帰宅、それか部活は休みだけれど部室で勉強、と言ってた奴もいたけれど誰だ、と音へと振り向く。
「──うわぉ、びびった! まーだ残って何やってんの?」
わー……うるさい奴が来た。
パンクな感じの黒強めの化粧にピアス、アシンメトリーの短い前髪とショートな髪の毛も真っ黒で、ややでっかい声と猫みたいにでっかい目をしている。
俺の隣の前の席の奴だ。
「ノムラこそ」
「アタシは忘れもん取りに戻っただけだっつーの。何、テス勉?」
そ、と話しながら解いていく。
「……間違ってんよ、ここ」
ノートを覗かれた俺は、え、と確認する。
するとノムラは俺の前の席──女子の席に座って教えてくれた。
すらすら、とわかりやすく丁寧な説明。
ノムラは風紀的に校則違反な奴だけれど、うるさ──面白くていい奴で、それともう一つ。
「さっすが」
学年首席なのだ。
どういう事情かはクラスの皆が知っている。
ノムラは、自分のやりたい事をやるために首席でいるのだ。
「このノートめっちゃ綺麗でわかりやっす。って──最近仲良いじゃん?」
にやり、と笑うノムラに俺は眉を寄せて我慢した。
「べ、別に仲良く、なんか──」
「──仲良くて何が悪いのさ」
まぁ、そうだけれど……ノムラもクラキと似たとこあんだよなー……はっきり、言っちゃうとことか。
こっちのが豪快だけれど。
「……あの、さ」
「何さ?」
「俺ら、って……どう見える?」
「アタシとクサカ?」
「じゃなくて──」
「冗談、わかってんよ。そうねー、んー、クラスメイト以上、友達以上」
不等号、左辺より右辺がでかい──は、ちょうどノートに書いていた。
そしてノムラはこう続ける。
「──括弧開き不等号、右辺をでっかく、親友、不等号右辺をでっかく、彼女、閉じ括弧。が、アンタの聞きたい事で当たってる?」
ちょっと待て、と軽くノートの端に書いて、わかった。
それからノムラが、好きなんだ? と付け加えたので俺は両手で顔を隠した。
くそ恥ずい。
「あっはっは! 問題簡単過ぎ!」
「笑うなやー……」
「ごーめん。人の恋バナは楽しーじゃんよ」
んでも女のクラスメイトに話すってのはどうなの? と言われてしまった。
ご尤も、ただ、男友達に話すのもなかなかしんどくてだな、と考える。
「頑張れ、応援する」
ノムラは俺の肩を叩きながら言った。
ばしーん、と力が強くて座っているのによろけた。
「ま、恋とか答えから始まるもんじゃないけど、ってアタシは思うけどな」
「ん?」
「気づいたら始まってる」
そういうもんじゃない? とノムラは耳に指を突っ込んだ。
何してんだ? と次の瞬間──ぴしゃーん!! と雷が大きく鳴ってびびった。
そういえばさっきから、ごろごろ、と空が唸っていたけれど、これはどこかに落ちたようで。
「あ、こんな感じじゃね?」
「は? 雷? ん?」
俺が頬杖をついて、わからん、とやや
「──逆もまた
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