コード=アンカー~目が覚めたらサイバーパンクな都市~

沼モナカ

1.電子の声に導かれて

ピ、ピと定期的な音が続いている。

見慣れた病室の天井は、何だかいつもより無機質だ。

もう何だかわからなくなってきたけど傍に感じられるのは両親だろう。

「綾人、返事をして…」

答えようにも喉が上手く動かない。そもそも管を繋がれているので不可能だ。

ああ、もうすぐお迎えが来るのかな。急に目の前が暗くなってきた。

ベッドが軋む。恐らくお袋が駆け寄ったのだろう。

短い人生だったけど、もう少しぐらい良い事があったら良かったなあ。


―――サモンプログラムスタート。ソウルサーチ中…

―――サーチ完了。人格、インストールシマス。


急に変な声が聞こえてきたけど、これが天国からのお迎えってやつなのかな?それに何だか虹色の光が見えてきた。それが全身を包む様になってきて、体が光の方へ引っ張られていく。

しばらく光を見ていたけど、突然真っ暗になった。天国に着いたのかな?

視界が開けてきた。体が地面に横たわっている感触がする。手足に力を込めてみた。するとどうだろう、今までとは打って変わって動くじゃないか。

立ち上がり、辺りを見回すとガラクタが転がっていた。どうやら大きな道路の脇に位置する様で、辺りには建物も何にもない。

仕方がないので、歩くことにした。病室にいた頃に比べて体力一杯なのが驚いた。

 元気に任せて道路沿いに歩いていく途中、車が一台走り去っていた。思わず手を挙げたが、無視されてしまった。

 しばらく落ち込んでいたけど、ちょっと待て。車ってあんなメカメカしくてケーブルだらけだったっけ?

 混乱しながらしばらく歩いていたら、その疑問は確信に変わった。

 口があんぐりした。目の前にはSF映画で見たような大都市が広がっていたからだ。

 スタイリッシュなビル群には3Dグラフィックな電光掲示板がピカピカ光っている。おまけに、先程見たようなメカメカしい車がばんばん走っているじゃないか。

 ここは一体どこなんだ、と辺りに目を動かしてみると、オンボロな看板が目に止まった。

「ネオサイバーシティ”トーキョー”へようこそ!」

ネオサイバーシティ“トーキョー”ってなんだ!?

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