第2話 ヒポグリフ
「さて、どうしたものか。思いの外出口が高いの……。魔術で階段を作っても良いが、疲れそうじゃな」
グリフォンを討伐後、わっちは頭を悩ませておった。
出来ることなら、楽して出たいのじゃが。
そんな感じで、腕を組ながら頭を悩ませている時じゃ。
視界の片隅に写る、転がっている岩の影で何かが動いた気がした──。
「──まだ何かおるのか? 隠れても無駄じゃ、出てこんか!」
わっちが声を上げると、先程と似た、中型犬より少し大きな魔物が、岩の陰から顔を出した。
そやつはこちらを警戒し、威嚇をしておる。
「なるほど、二頭居たから食料の減りが早かったのじゃの?」
どおりで、生け贄と食料を消費するペースが早いと思ったのじゃ。
本来魔物とは、戦争のため非人道的な実験により生み出だされた生物。
そのためか、一度満腹になれば一月から二月は食べずに生きていける作りになっておるはず。
何となく疑問に思っとったのじゃが、これで納得じゃ。
「それにしても子供とは言え、やけに痩せこけているの?」
いや、痩せこけていると言うよりは……。
「衰弱しておるのか……? しかもこやつ、良く見るとグリフォンではない、ヒポグリフじゃな」
グリフォンとは下半身が獅子、それに対して、ヒポグリフは馬の下半身を持っている。
わっちは辺りを良く見ると、人の骨とは別に馬の骨も転がっていた。
「供物として捧げた馬に産ませた……。っと言うところじゃろうか? グリフォンの奴、空腹で母体となった馬を食い、その後、こやつにはろくに分け与えず食料を一人占めと言ったところじゃろうな」
グリフォンの生体には、そのような事例があると聞いたことがある。
目の前にいる魔物のわっぱが、それを証明しておるか……実に興味深い話じゃが。
「キュウーキュルルルゥー!!」
「なんじゃ、ぬしの父を殺したわっちが憎いか? すまぬの、わっちも自身と家族を守るためじゃった、許せとは言わん。なんなら相手をするが……」
わっちが身構えると、ヒポグリフは後ずさりし、岩の裏に隠れる。
魔物は闘争本能の塊。それを抑え、引き下がれる個体はそうはいない。
「
戦意の無い魔物を手にかける気は起きぬ。
しかしこのまま放っておけば、またも村の驚異になるやしれんな……。
困ったのー。
そんなことを考え、空を見たときじゃ。
「そうじゃ! 出るにも空を飛ばねばならぬな。ぬしよ、わっちに飼われる気はないかの?」
くっくっく、グリフォンやヒポグリフは、神の馬車馬変りに使われていたと言うほど賢い。
立派な翼もこしらえておるようじゃしの。
あれなら子供と言っても、乗って移動するなど容易いはず。
無駄に殺すこともなく、村も守れる。これは妙案じゃ。
「わっちに着いてこれば食べるには困らん、何不自由無く育ててやろう。それにわっちの首を取るにしても、側に居た方が都合が良い……そうじゃろ?」
わっちの提案を聞きくと、ヒポグリフは姿をあらわし、伏せて頭を垂れてみせる。
「言葉を理解しておる、本当に賢い奴じゃ」
わっちが近づき、股がると、ヒポグリフは軽々と起き上がる。
「よし、まずは置いてきた食料の確保と食事じゃ、その後大空へ羽ばたく──頼んだぞ!」
指を示す方は明かりの届かない、暗い洞窟だ。
しかし、立ち止まっては居られない。わっちには、前世で与えられた使命を全うする義務があるのじゃ。
新たな肉体を獲た今日、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます