第8話「山口優矢」

私と森先輩は飲食店「夕暮れ」のテレビを見て漠然とした。


「山口優矢」は人質をとって包丁を振り回している


そして、何かを言っている。


「東京本社温か保険」の玄関の前で


「俺を馬鹿にしやがって❗」

私はそう言っているのが聞こえた。

森先輩も、そう聞こえたに違いない。


これは、夢なのか?現実なのか?

分からなくなっていた。


「中にいる社員は無事なのだろうか?」

「怪我をしていないのだろうか?」


私は心配で森先輩の声が聞こえなかった。


会社の回りを警察官が取り囲んでいる。


たまたま会社の前を通りかかった若い主婦らしい

人が人質になっている。


「緊急生放送❗ 山口優矢の時と同じ大事件❗」

そう見出しに書いてあった。


森先輩が何度も呼ぶ声がやっと私には聞こえた。


「おい❗大丈夫か❓️竹田、おい竹田❗」

今「山口優矢」の事を話そうとしたんだぞ。


「ごめんなさい。私、怖くなってしまって。

山口優矢の事を教えてください。」


「いいか、落ち着いて聞いてくれ。

これから話す事は、とても恐ろしい事実だ。」


「竹田が入社する前、「山口優矢」という新卒の若い青年が入社してきた。

そいつは、はじめからパソコンの早打ちが他の社員より速くて、とても明るく気遣いのできる青年だった。」


腰も低く穏やかな性格で、冗談もいう。

みんなに好かれている人気者だった。

そればかりか、先輩を出し抜いて、いつも営業成績がトップだった。

彼を嫌う者はいなかっただろう。


あっという間に東京本社第三営業部のリーダーに

抜擢された。


ところが上司はー。


「山口優矢」に第三営業部の成績を一人三ヶ月で50人を目標にしろ❗」そう命令した。


優しい優矢は、それでは部下が可哀想です。

そんな目標言えません。


そう、はじめて上司にたてついた。


それと同時期に部下でパソコンが出来ない奴がいて、上達させるように厳しく言われたんだ。

その他に指名が来る御客様の対応で「山口優矢」は

くたくたになっていた。


それでも弱音を吐かず、社長のナンバー2になったんだよ。

ところが、前の社長は山口に無理難題を押し付けて

ゴルフざんまい

寝るまもなく山口は働いた。


くたくたになった山口は前社長に文句を言った後

「俺を馬鹿にしやがって❗」そう叫んで包丁で社員を次々と刺したんだ。

そこを現行犯で逮捕されたんだ。」


「ちょっと待って?前社長って、前の社長は?もしかして?」


「そう、出血多量で亡くなったよ。幸い他の社員は助かったが、後遺症が残ったり、傷が残ったりしている者が多かった。

ほら俺も腕に縫った後があるだろう。


今の社長は前社長の弟なんだよ。


そして前の社名は「ゆったり保険」だったんだよ。

そして場所も別のところにあったのさ。


新聞に大きく出てしまい。

東京の下町に引っ越して社名も変えたんだよ。」


「そんな事があったなんて知りませんでした。」


「それだけじゃないさ。山口が捕まったあと、引っ越した会社に机や椅子を前の会社と同じように配置したんだ。

そして竹田の隣に山口の机と椅子を置いたんだ。


あの事件の後たくさんの社員が、辞めて行ったので、大勢の人を雇ったんだ。


ところが山口の席に座った人はみんな辞めて行くんだよ。それも3日で。

不信に思った社長が聞いたんだ。」


「何故辞めるのか?」

と、「そしたら幽霊を見たと言うんだ。」


「それってもしかして❓️」


「そう、幽霊じゃない。山口優矢の生き霊だよ。

あの時あいつは刑務所にいたはずなんだから。

残業していると首を絞められたり、

仕事の邪魔をしてくるらしい。

今まで山口優矢の席に座った人はみんな仕事ができる人だった。


今度の山内君は全く仕事が出来ない。

だから身体を乗っ取られてしまったんだよ。


私は、なおさら会社の中にいる社員の事が心配で

たまらなかった。


社長は無事なのだろうか?


これから、会社はどうなるのだろうか?


本当に山口優矢の事件の真相はこれだけなのだろうか?


私はまだ、他に何か理由があるような気がしてならなかった。


もっと根深い何かが~。


続く


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