Episode.22 決勝戦に向けて
シンはその後、問題なくトーナメントを勝ち上がっていき、今、Aブロック最終戦──決勝進出を賭けた試合の最終場面。
「はぁあああああ──ッ!」
シンが、赤く燃える炎を
「【魔法具製作師】じゃなかったのかよぉおおおおおッ!?」
鋭い右ストレートが
爆音と共に吹っ飛ばされた男性探索者は、そのまま地を転がりやがてその身を光の欠片と化して四散した。
『勝者、そしてAブロックを制したのは───市ヶ谷シンだぁあああああッ!』
「「「うぉおおおおおおおお─────ッ!!!」」」
『誰がこの結果を予想したでしょうかッ!? 【魔法具製作師】が決勝進出ッ! 前代未聞だぁあああああッ!? 流石は『
「あはは、実況もかなり興奮してますね……」
「シンの試合だけ力入りすぎでしょ、実況放送……」
「流石先輩ですッ!」
途中からシンの試合の実況アナウンスの盛り上がり具合に引き気味だった柚葉と風花、そんな盛り上がりを起こしたシンの姿を嬉しそうに見る彩葉。
「今日の試合は終わったことですし、先輩と合流しましょう!」
「そうですね、一階で待ちましょう」
「明日はバトルロイヤルやった場所……
三人はそう言って観戦ルームを後にし、一階でシンを待つことにした。
─────しばらくして。
「お待たせ」
エレベーターからシンが戻ってくる。
「お疲れ様です、先輩!」
「凄い試合でしたね」
「凄い試合と言うか……なんかこのレベル戦、途中から貴方が主役になってたわね」
彩葉、柚葉、風花はシンを向かえる。シンは少し疲れた様子ではあったが、どこか嬉しそうにしていた。
そこへ─────
「おい、あそこに『
「えッ!? どこどこッ!?」
「ほ、ホントだッ!? 生『
同じく一階に戻って来た観客が、シンの姿を見付けるなり寄って
「──ああ……疲れた……」
「試合終わったときより疲れてますね、先輩……」
「あはは……」
「すっかり人気者ね」
「勘弁してくれよぉ……」
シンとその応援に来た三人は、
歩いていると、手頃なファミリーレストランが見付かったので、そこにすることにした。窓際のソファー席に案内され、シンの隣に彩葉、向かいに風花と柚葉という形で座る。
「では市ヶ谷さん、明日の決勝について話しましょう」
そう切り出したのは、シンのアドバイザーである柚葉だ。柚葉はスマホを取り出し、
“《Aブロック》市ヶ谷シン vs 《Bブロック》
「野崎隼人……男か……」
「何よ、男かって。女が良かったわけ?」
シンの
「ち、違うわッ! 別に他意はないってッ!」
シンは首を横にブンブンと振って答える。風花はどこか不満げに鼻を鳴らしていた。
そこに、柚葉がカバンからタブレットを取り出してテーブルの真ん中に置き、皆に見えるようにする。
「野崎隼人……
「おぉ……」
シンと彩葉が風花の方をチラッと見る。
「使っている武器は【ピアシング・スピア】。一応どこの装備店にも売っている武器ではありますが、とても貫通力の高いものです」
そして、柚葉はタブレートの画面を横にスワイプする。すると、そこの画面には野崎隼人のステータスが表示されていた。
「ゆ、柚葉……こんな情報もゲットできるのか……」
「いえ、これはあくまでも私が推測したものです。本人のデータとは違います。しかし、この方が今まで討伐してきたモンスターや、その戦い方などの様々な情報から推察するに、こういう感じのステータスだと思われます」
その柚葉の言葉と情報に、シンだけでなく、彩葉や風花まで感嘆の声を
「でも、これを見る限り……結構ヤバそうね……」
「そうですね……STRにかなり振ってますね。」
「おいおい……一発喰らっただけで結構削られそうだぞ」
「それだけではありません」
シン達がそのステータスに少し危機感を感じていると、柚葉が続ける。
「確かにそのSTRも脅威ですが、何より【槍使い】というところが一番の問題です」
「どういうことだ?」
「ああ……なるほどね」
柚葉の言葉に、風花が納得したように
「【槍使い】の戦い方は、完全な接近戦の【剣士】や【拳闘師】とも、遠距離戦の【アーチャー】や【魔法師】とも違うの。幅広い間合いを持った戦い方が出来る……それが【槍使い】よ」
風花の説明に、柚葉が続ける。
「その通りです。そして、市ヶ谷さんは今までそんな相手と戦った経験がない。市ヶ谷さんと同じ間合いで戦える相手でも、距離を詰めていって戦える相手でもないんです」
「先輩……」
彩葉が少し不安げにシンの横顔を見る。
「マジかよ……どうすればいいんだ……」
そんなシンの言葉に、沈黙が流れる。
すると─────
「はぁ……仕方ないわね……」
風花がため息混じりにそう言った。皆が風花に視線を向ける。
「私が【槍使い】に対抗するための特訓、してあげるわよ」
「えっ……?」
「な、何よ」
「良いのか?」
「こ、ここまで来たんだから優勝してくれないと、応援した私も……その……アレでしょッ!? そうよ、これは私のためなんだからッ!? ずべこべ言わず付き合いなさいッ!」
「あ、ありがとな! いやぁ……風花がいてくれて良かったぜ」
「ふん」
そんな風花を、彩葉と柚葉は温かく微笑んで見ているのだった。
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