Episode.5 魔法具の力
黄昏色の空の下、その色を
その場所は、多くの探索者でごった返していた。探索を終え、今から帰ろうとしている者や、これから探索を始めようと
そんな中、後者の様子で一人の少年───シンが、
(二ヶ月ぶりだな……Cクラス
ここは、シンが二回探索し、イビルボア一匹に苦戦させられた
「
シンが探索者バッジの起動コマンドを口にする。すると、シンの身体がエーテル体と化し、二ヶ月掛けて作り上げた魔法具が、その身に
ダークグレーのロングコート【
(さぁ、リベンジマッチだッ!)
シンが
そのせいか、進んでも進んでもモンスターが見当たらず、いつの間にかシンは、
「見付からないな……。おまけにこんな所まで来てしまったが、確か
シンはそう言って、来た道を引き返そうとする。すると─────
「あれは……?」
深い霧のため、大まかなシルエットしか見えないが、それは人の背を大きく上回る四足歩行のモンスターだと分かる。
シンは一瞬、見過ごして戻ろうと思ったが、どうしてか足がそのモンスターの方へ向いた。
近くに来ると、そのモンスターの身体がより一層大きく見えた。重量感のある大きな
(イビルボアの上位種……ジャイアントボアか……)
そのジャイアントボアは、まだシンの存在には気が付いていない。逃げるなら今がチャンス。しかし─────
(いつまでも……立ち止まっちゃいられないッ!)
シンは脚を一歩前に踏み出す。すると、地を踏む音に気が付いたジャイアントボアが、喉を鳴らしながら、その巨体をシンに向ける。
シンは、
それもそのはず、高レベル探索者だったシンの父の
「ブモォオオオオオオオ!!」
ジャイアントボアは盛大な
「───ふッ!」
【
その
Uターンし、再び突進してくるジャイアントボア。シンは改めて拳闘の構えを取る。直線的に突っ込んでくるジャイアントボアに、交わす仕草を見せないシン。それどころか右拳を腰辺りまで引く。
シンはその拳に大量の魔力を込める。すると、右手甲の魔法陣が赤く光り、浮き出す。浮き出た魔法陣は甲のところで高速回転。そして─────
シュバッ!
右拳から赤い炎が燃え上がる。シンはその拳をより固く握り締め、突進してくるジャイアントボアを迎え撃つべく、その姿を見据えている。
「ブモォオオオオオオオ!!」
「はぁあああああああッ!!」
ドォーン!!
激しい
「あぁあああああああッ!!」
高速回転する甲の魔法陣が赤く輝き、シンの左拳に炎が宿る。そして一閃。放たれた左ストレートが、ジャイアントボアの眉間に刺さり、赤い炎の閃光が、ジャイアントボアの巨体を突き抜ける。
少しの時間差を置いて、ジャイアントボアの巨体が黒い塵と化して四散する。そして、
シンは、しばらく自分の両手を
その後シンは、この
─────
「おおおおおぉ……ッ!」
シンの手元に二万五千円があった。
それは、ジャイアントボアの結晶二個(一万円)、ジャイアントトードの結晶二個(一万円)、イビルボアの結晶十個(五千円)を換金カウンターで換金したため、手に入れたものである。
(Cクラス
シンは小さなガッツポーズをして、そのまま
─────次の日。
シンは、いつも通りの学校での時間───
この第七中学・高等学校は、三階建て、コの字型の造りをした校舎で、中等部の東校舎と高等部の西校舎を繋ぐ部分の校舎───北校舎の一階に、中高共同の職員室がある。
「失礼します、高等部一年一組の市ヶ谷シンです。佐藤先生はいらっしゃいますか?」
「こっちだよー」
シンが職員室の中を見渡すと、椅子に座ったまま手を上げて、場所を知らせてくる佐藤先生の姿があった。
佐藤先生はポニーテールが特徴の若い女性の先生で、シンのクラスの担任教師だ。
「珍しいね? 市ヶ谷君が職員室に来るなんて。で、何かな?」
「はい、実は一つ部活を立てたいなと思っているんですが……」
「部活? 何の?」
「えっと、
この
「あー、なるほどね。そういえば探索者になったんだってね。でも確か【魔法具製作師】だったよね? 君が直接探索するのは無理なんじゃない?」
「まあ、今は何とかやっていけてます。でも、これから先、どうしても
「ごめんねー、無理なのー」
佐藤先生が申し訳なさそうに、両手を合わせるようにして言ってくる。
「そう、ですか……では、失礼します」
シンが残念そうな様子で、その場を立ち去ろうとしたとき─────
「───だって、もうあるから」
「へ?」
シンは出入り口に向けていた足を止め、佐藤先生の方へ視線を戻す。
「いやぁ、市ヶ谷君は何か持ってる人なのかもね? 良いタイミングなんだよー。あそこに行ってみ?」
そう言って佐藤先生は、中等部の教師団の使用するデスクの方を指差す。シンもそちらを向くと、その先には、椅子に座る中等部の教師だと思われる壮年の男性教師と、その教師と話している綺麗な小麦色の長髪をした少女の後ろ姿が見える。
「分かりました、失礼します」
シンはそう言って佐藤先生に軽く頭を下げると、言われた通り、その場所へ歩いていった─────
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