すれ違って占う

 あるところに定住しない占い師がいた。それも大都市などを移動しながら営業するという意味ではない。いや、ある意味、移動しながら営業してるらしいんだけど。こんな風に言い切れないのはその占い師の営み方が特殊だからである。平たく言ってしまえば歩きながら通行人を占っているのだ。もちろん勝手に占っているのだから代金は取らない。ちなみに、すれ違った人に無線通信で画像を送れるアプリを使って占いの結果を送ってるらしい。一歩間違えれば勝手に画像を送りつける迷惑な奴になってしまうが、そういう不平不満や批判が出てこないのはひとえにその占いが当たっていると感じられているからだろう。

 もちろん世の中にはバーナム効果というのがあり、それによる効果も大きいのかもしれない。バーナム効果というのは誰にでも当てはまるようなことを言われたときに、人はそれが自分を言い当てていると勘違いしてしまう現象のことである。例えば、「あなたは大胆なところもありますが、それでいて慎重な一面を持ち合わせています」みたいなものだ。さすがにこの例は露骨すぎて怪しいかもしれないが、本職の占い師ともなればもっと華麗にやってのけることもできるだろう。

 しかし、こんな風に占いに疑ってかかる人なんていくらでもいる。でも、そういった人たちもみな口を揃えて当たっていると言うのである。僕の知り合いでかなり用心深く、ほぼ人間不信みたいな人がいるが、その人もこの人の占いだけは当たっていると断言していた。だから本当に合っているのかもしれない。ちなみにこういったすれ違い占い(?)は宣伝の一環としてやっているらしく、その結果の画像にはちゃっかりQRコードも載っているらしい。そこまでズバッと言い当てられたのならば確かにもう一度行ってみようという気になるのも頷ける。また、これまでに何人かもう一度すれ違って無料で精度のよい占いを受けようと思った輩がいたみたいだが、そういった再会は叶わないらしい。やはり、2回目からは金を払えということなのだろうか。

 そういえば占いが当たるという話はよく聞くけれど、占いの内容がどういうものなのかという話は聞いたことがない。それがなぜかは分からないが口止めでもされているのだろうか。それともみんなバラバラの種類の占いを受けているとか。僕も占いなんて非科学的なものは信じないタイプだけれどたまにはそんな根拠のないものに一喜一憂してみたいとも思う。だれか僕を占ってくれないか。神じゃなくてもいいからだれかサイコロを振って僕を占ってくれないか。

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