王様の孫娘と結婚したい青年
王様は聞き返した、何、余の孫娘と結婚したいだと、そうなのか。男に二言はないか。
はい、私は一度決めたことはやり通す人間です。
そうかそうか、それは頼もしい。確かに孫もそろそろ相手を探す年ごろではある。では、早速一つお願いをしてよいか。かわいい孫のためだ。
はい、何なりと。彼女のためなら。
よおし、その意気込みだ。よいぞ、青年。おい、あの図面を持ってこい。
はっ。こちらでございますね。
そうだそうだ。青年、これを見よ。この囲いのようなものを孫の家の周りに作ってほしいのだ。最近、孫に近づこうとする不届きな野郎が出てきてな。そういう奴から孫を守るためにこれが必要なのだ。
なるほど、分かりました。
なるべく早くしておくれよ。これが完成したら、孫のところに行ってお前の気持ちを伝えればよい。
ありがとうございます、王様。
それからというもの、この青年はよく働いた。指示されたことを完璧にこなすことはもちろんのこと、与えられた部下たちの誰もよりもよく働いた。彼らに指示を出しながらも決しておごることなく動いた。一番に現場に来て、日が沈むと王様の家臣に一日の成果を報告して最後に現場を立ち去っていった。予定を上回る速さで工事が進むものだから、宮廷側の材料の準備があわや追いつかないなんて時もあった。雨の日も作業は進められた。彼は部下たちにあまりにも大雨だから家のものと一緒に過ごして家に万が一のことが無いように、と伝えていたが、彼自身はもう母も父も死んだから、と言って家は放ったまま作業を続けた。両親も亡くなったらしいし、元から兄弟姉妹がいないという話だから、彼がある日、王様に言った私には彼女しかいないんです、という彼の言葉はあながち間違っていないのかもしれない。
彼は愚痴一つこぼさなかった。あまりにも彼が熱心に仕事をこなすものだから、王様が派遣した目付け役も途中からお役御免となった。それでも彼は変わらず作業を続けた。やはり、王様のため、結婚のためというのもあるのだろうが、愛する彼女のためというのが大きいのだろう。黙々と手を動かし、重労働、肉体労働をこなす姿に部下たちがついていかないわけがなかった。基礎部分が完成すると、資材置き場からは石や木材などが姿を消し、金属らしきものや火薬らしきものが補充されていった。作業の種類は変われど、青年はてきぱきと作業を進めた。
そしてついに、完成のときがやってきた。
王様、完成いたしました。 青年は誇らしげに報告する。
そうかそうか、それはよく頑張った。お前の熱心な働きぶりはみなから聞いておったし、わしも見ていたぞ。約束の通りするがよい。
はい、王様、ありがとうございます。
青年はそう言って彼女の家の扉へと向かった。彼が自分たちでつくった囲いの入口に差し掛かったとき、目の前の家は爆発した。
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