揺→光→湯→光→闇
ぐらっ
揺れた。ついに、来た。急に周りの気温が上がったのを感じる。それにかすかに光を感じる。やっと暗くて冷たい雰囲気のところから移動できたのだ。聞く話によると、こういう環境の変化が起きた後は、天井が開けられるという。そしてまばゆいほどの光を浴びることになるらしい。周りのものたちも狼狽えている。黄色いやつなんか、ころころとあたりを移動しながら騒いでいる。ずっしりと安定している僕たちの大地は自分が全体として移動しているかもしれないなんてことには無頓着なのか、なにも動かない。僕はたまにバランスを崩しながらも、じたばたはしていない自覚はある。
べり
何かが裂かれたような、破れたような音がした。それは壁の向こう側で起きているらしい。何にせよ、天井もまだ開いていないし、外の様子は分からない。でも、今の音に合わせて僕たちは大回転した。大地も少し浮き上がったようだ。というか、天井や壁ごと傾いたのだから当然だろう。それでも、いつのまにか、また安定した。
ピピピ
突如、機械音らしき音が等間隔で全て同じ大きさで鳴り響いた。これも壁の外の出来事だがさっきの音と違って鋭い音だったのでよく聞こえた。でも、何も起きない。何だったんだろうか。もう、みなも放心状態だ。かすかな音なら今までも聞いたことはあれど、こんな強い音を近くで聞くのは初めてだ。僕は何かが起きそうな気配を感じていたから、この音でもそんなに動揺しなかったけれど、気配は音だけだった。何も起きない、そう思っていたら、
チチチチ
何かが始まる音。そして再び沈黙。なんだなんだ。大地はとっくに静けさを取り戻しているし、黄色いのも落ち着き始めた。かと思うと、向こう側の奴らが騒ぎ出した。どうやら、壁が熱くなってきたのだという。僕は何ともないし、にわかには信じがたかったけど、信じてあげないとかわいそうなくらいに苦しさを訴えている。
ピーッ
熱い熱いという騒ぎが極まってきたころ、こんな音が鳴って驚いていたら止まった。あんまり暑くなくなってきた、そう、向こう側のやつらが安心していると今度は天井が悲鳴を上げた。どうやら熱源らしきものが近づいてきているらしい。
ぺりぺりぺり
天井が僕から離れていく。確かにまばゆい光。そして新しい空気。こういうときにシャバの空気はうめぇなどと言うのだろうか。こんな偏った知識を反芻していると、熱湯が上から降って来た。あまりにも非人道的だ。酷すぎる。僕は頭上をお湯が流れているだけだからまだましだが、大地はどんどんとお湯に浸かっているらしく、厳かで落ち着いた雰囲気は軟化していっているような気がした。そして僕までお湯がたどり着くか否かといったところで、天井との再会を果たした。しかし、天井は湯気を浴び続けている。
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ
今度はテンポの速い鋭い音。僕の意識は遠のいていく。何やら棒が差し込まれて、次の瞬間、僕たちは光を一瞬浴びた後、暗闇に葬り去られた。
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