二匹のうさぎと僕

 「最近、R女の友達ができたんだよねー。かわいいんだよ」今、僕は、彼女とパソコンのアプリで通話をしてる。どうやらサークル同士の交流会で知り合ったらしい。彼女の大学とR女は結構離れているから、やっぱり活発なサークルのようだ。


 「みーちゃんって言うんだけどねー」そういえば、美也ちゃんはR女だった気がする。それに周りからはみーちゃんとか、みいとか呼ばれていたはずだ。まあ、大学なんて学生数が半端じゃないが。


 「あとさぁ、最近ドラマ見てる?わたし、あの、『二兎追う者』見てるんだけど、ゆう君あれ見てる?」

 「見てないな~、面白い?」

 「うーん、コメディではないんだけど、どっちかと言えばスカッとする感じかな。」

 「あー、あるよね、そういうジャンル。」昔からドラマはあんまり見ない方だが、咲はドラマは毎シーズン何作品かは欠かさず見るタイプだ。そういえば、美也ちゃんは、テレビはあんまり見ませんって言ってたような。


 タンタンタカタンタンタン タンタンタカタンタンタン

 

 電話。どうやら、ちょうど美也ちゃんからだ。僕は後先考えずに出てしまった。


 「もしもし、美也ちゃん?どうしたの、こんな時間に。」そう、今はもう夜中の1時。普通は電話を掛けるのを躊躇う時間だ。

 「裕翔さん、今日、バイトがあったんですけど。」

 「うん、お疲れ様。」

 「なんか、怖いお客さんが居て。」美也ちゃんはチェーンのコーヒーショップでウェイターのバイトをしている。


 「主人公が同時に2人の女の子と付き合うんだけど、なんか、3人目に手を出そうとするのー。」

 「え、2人でも大概なのにね。」

 「そー、なんだけど、うまく行っちゃってるんだよねー。」

 「うまく行くのかー。」中々な筋書きのドラマだなと思っていたら、美也ちゃんが電話でしゃべっている。


 「だから、何回も言ってるじゃないですか、うまくいかなかったんです。それで、お客さん、帰るって言い出しちゃって、」


 「結局3人目には手は出さないんだけど、でもさぁ。」

 「うん、よかったじゃん、まだ、二人で」


 「よくないんですって、結局、先輩が来て一緒に謝ってくれたからなんとかなったんですけど。」

 「そっか、いい先輩がいてよかったよかった。」


 「そー、先輩がカギだったんだよね、偶然、その一人目の子と二人目の子をどっちも知ってる先輩がいて、その人が二人に教えるわけ、きみたち二股されてるよって。それで、ばれるんだよねー」

 「あー、でもばれてよかったのかな」

 「そう、これが先週まで。多分、明日、二人ともから、別れを切り出されるんだよね」


 「ほんとに、その先輩は優しい人で、あっ、女の人ですよ、ほんとこんな優しい人いまどき珍しいなってくらいです」

 「珍しいかぁー、いい人と出会えてよかった」

「そー、でも、やっぱりそんな都合のいいポジションの先輩がいるとか珍しいじゃん。まあ、実際、ドラマだしね。

 「そうなんですよ、ドラマみたいにはいかないんです」

 「ね、ゆーくん。でも、私たち自分で気づいたんだよ、すごくない?」

 「そうなんですよ、裕翔さん。中々だと思いません?ですよね、咲さん」

 「うん、みーちゃんこそ、グッジョブだよ」


 ハイタッチの音がパソコンとスマホから聞こえる。

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