行方不明の3人とぬいぐるみ

 ここ一週間、小さい子が行方不明になる事件が続いている。ちょうど一週間前に幼稚園の年長の男の子が、一昨日、小2の姉と年中の弟が失踪している。どちらに関しても捜索願は出されているが未だ見つかってはいない。自力ではそう遠くへは行けないだろうから誘拐の線が濃厚と言われている。これらの事件が表沙汰になって情報の提供が呼びかけられるようになってから、ある種の報告がぽつぽつと警察に届き始めていた。

 深夜、高速道路と接続する車道の近くに小さな男の子が座っているとか、高速道路をスモッグを着た幼稚園児が歩いているとか言ったような報告だ。このようなのが計5件警察には上がっており、さらにもう一つ特異的な証言があった。高速でぬいぐるみを持った幼い子どもを見かけた、というものだ。ぬいぐるみという単語は他の目撃者からは出てこなかったから、この証言者の見間違いだろう、という声も上がった。しかし、暗闇の中でぼやっと見たものを自信満々に言うはずもなかろうということで、後日、警察は詳しい話を聞きに行った。すると、小さいぬいぐるみを確実に持っていた、といっても子どもと同じくらいの大きさなんだけど、という。元々、この証言は年長の男の子が行方不明になった二日後になされたものだったから、見たのがその男の子だったという可能性はある。しかし、この男の子の母親によると、男の子は特段ぬいぐるみが好きだということはないし、一つも持っていないらしい。

 こうして、捜査に進展が見られない間に、また新たな証言が出てきた。それらはどれも、高速道路付近にぬいぐるみを持った子どもがいたという点で共通していた。それを聞いて、先のぬいぐるみを持っていたといのは見間違いではなかったのだ、と警察が確信を持っていると、さらなる情報が入ってきた。ぬいぐるみは全部で三つ。そのうち一つは他の二つより少し大きかった、らしい。段々と訳が分からなくなってきた。

 そこに行方不明になった子どもたちの家族や関係者から連絡が入った。子どもたちが脳内に戻って来て脳内に話しかけてきた、というのだ。母親や父親が順番に子どもたちが自分の頭の中にやってきてママ、パパ、あのねーといつも通り話し始めたらしい。その後、子どもたちの保育園の先生なども同様の声を聞いたらしい。

 

 プルルルルルル プルルルルルル プルルルルルル

 

 日が暮れてから大分たったころ署の中で電話が鳴った。

 今日も朝から、高速道路の周りを見張っていたんですけど見つかりました。

 おぉ、年長の男の子か、姉弟か。前のめりで聞く声に対して電話の主は答えた。

 男の子です。3つのぬいぐるみを持っていたという証言のあった。

 おぉ、そうか、確かにその子も保護すべきだからな。

 それはそうなのですが、、、。ぬいぐるみと思われていたものはぬいぐるみではなく、行方不明になっていた子ども3人でした。どの子も死亡が確認されましたが、口元は笑っています。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る