第29話 認識

「こっちこっち」

 と、君は僕を導いた。

「本当にこっちなの?」

「うん。大事なものがあるんだ」

 一緒に探してと頼まれた僕は、普段行かない森の中を進んでいた。

 草木が生い茂るその道は、一歩先へ行くのも一苦労だった。

「早く早く」

 君はまるで浮きあがるように、その中をスイスイと歩いていく。

「ねぇ、知ってる?この先って、子どもは行っちゃダメなんだよ」

「へぇ。君って子どもなんだ」

「うわ。嫌な言い方!」

 少しムキになって、僕は君を追った。

 次第に、ごうぅぅ…という重たい音が聴こえてきた。

「うわぁ」

 森の奥。

 そこでは、すごいたくさんの水が空から落ちてきていた。

「滝だっけ?初めてみた」

「そうなんだ。わたしは二回目」

「それで、大事なものは?」

「あったよ」

 君の目の前にあったのは、まるで眠るように死んでいる君だった。

「ありがと。見つけてくれて」

 眠る君を遺して、君は消えた。

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