第6話 雨乞

 水は、命の一番そばにいる。

 と、おじいちゃんは言った。

 すこしむかし。

 わたしが、

「どうして、わたしたちは生きているの?」

 と、聞いた時のことだ。

 おじいちゃんは、

「水に聞いてみなさい。水は命の一番そばにいる」

 と教えてくれた。

 それから、水を飲む時。

 手を洗う時。

 お風呂に入る時。

 それ全部が、答えを聞くための時間になった。

 雨の日は、傘を持ってお散歩に出た。

 空から来た水なら、何か教えてくれると思ったからだ。

 家族旅行は、たくさんの水がある海か、水がまったくない砂漠に行きたいとお願いした。

 海や水族館にはたくさん行けたけど、結局砂漠には一度も連れていってもらえなかったな。

 答えを待ってるだけじゃダメかもと思って、水を勉強するようになった。

 そしていま。

 わたしは海洋学者になっていた。

 答えはまだ聞けていない。

 だから今も、雨の日はお散歩の日なのだ。

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