オープニングを戯曲風にしてみる。

登場人物

渡辺双葉 ・・・12歳中1。この土地の人間とは異なる顔立ちをしている。乱雑に切られた短髪のせいか、少年にも見える風貌である。陰鬱な空気を纏っている。

東恭子先生・・・27歳。1年2組の担任、美術教師。化粧や衣装がやや派手で、気の強さがほの見える。

戸村修平・・・1年2組の学級委員長。正義感の強い優良生徒。

その他、クラスには30余名の生徒がいる。


平成~コロナ前のいずれか


日本のとある田舎で、ほぼ村。田畑が広がる。かつて暴れ川と呼ばれた大きな川が流れ、土手が城壁のように築かれている。


――第一話

六月の初旬、一年二組の教室。1クラスに30人弱の生徒がいる。前方に大きな黒板、その前に大人の腹ほどの高さがある教卓が置かれている。教室の後方にはロッカーが並んでおり、生徒それぞれの荷物、体操着や美術の道具などが入れられている。その上には、やや小ぶりな黒板が掛けられており、今月の目標やテストの予定が書きだされている。運動場側の窓はすりガラスで、湿気を逃がすために全て空いている。

東先生が黒板と教壇の間に立ち、連絡事項と生活上の注意点を説明している。紅い口紅が毒々しく、強く引いたアイラインからも気の強さが伺える。タイトなベージュのスカートと白い開襟のブラウスは、特に派手ではないのに彼女の体型もあり強すぎる色気を演出している。

教室の一番後ろ、窓側の隅の席に渡辺双葉が座っている。顔立ちはこの土地の人間と異なり、どこか都会的である。少年とも少女ともつかない風貌だが、乱雑に切られた短髪のせいか制服のスカートが似合わない。他の一年生が真新しい制服に身を包んでいるのに対し、彼女のものだけやたらくたびれている。

彼女は病的なほど無感情な顔で目だけを動かし、窓から見える遠くの里山を眺めている。初夏の強い日差しが雲間から降り注ぎ、里山の木々を鮮やかに照らしている。しかしくっきりと見える風景は、雨が近い事を示しているのを彼女は知っている。

他のクラスメイトは窓の外に興味を持たず、先生に見つからない程度に小声でおしゃべりをしたり、鞄に荷物を仕舞ったり、消しゴムを飛ばすなどの小さな悪戯に興じている。


東先生

「(教卓から身を乗り出しつつ)もう6月に入りました。もうすぐ最初の期末テストが始まります。中学生活の中心は部活じゃありません、勉強です。今から復習を繰り返して、少しでも上の成績を目指して下さい」


双葉

(不愉快さを感じ、微かに目を細める。しかし周囲には気付かれない程の小さな変化であり、目はずっと外を向いている)


東先生

「(チャイムの音を聞き)はい、では今日のお話は終わりです。委員長、号令」


委員長

「(一拍置いて、大きく響く声で)起立!きをつけ!礼!」


クラス全員

「(きれいに揃ったタイミングで礼をし、はっきりと)ありがとうございました」


(東先生は、それを満足気に眺める。直後、クラスの統率は乱れ数名が教室から飛び出す。険しい顔になった東先生は、注意しようとややヒールの高いサンダルで大股に廊下に向かう)

(双葉は黙って大きく膨れた通学鞄を持ち、隅を選んで静かに教室を出口へと進んでいく。彼女を気にかける者は誰もいない。が、委員長が気付き少し近づく)


委員長

「渡辺さん、さよなら!」


(大声に関わらず、双葉はそれが自分への挨拶だと全く気付かずに無反応で去っていく。委員長は気落ちしてうつむき、右手の指で頬から髪まで引っ掻くようにさする。が、直ぐに気を取り直して自分も帰る用意を始める)

(双葉は登り階段の手前で立ち止まり、透明な窓ガラスごしに旧校舎を見上げる。飛び降りたい衝動を微かに感じるが、すぐに視線を戻し階段を上に進む。進むテンポは徐々に速くなり、4階につく頃には駆け足になっている。少しずつ強張った表情が弛み、靴棚で男物の茶色いサンダルを見て安堵するように微笑む。)




― ̄ ̄― ̄ ̄― ̄ ̄― ̄ ̄― ̄ ̄― ̄ ̄― ̄ ̄― ̄ ̄― ̄ ̄


オープニングだけ戯曲風にしてみた。

正直、うわぁ・・・と思うくらい、今の作品に情報が少なかった事が分かる。

双葉には他人への興味がないとはいえ、説明すべき事が大量に抜けている気がする。

こういう作業を繰り返しつつ、より真に迫る内容にしていきたいと思う。

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