雨宮さんとレイン君

あさひ

第1話 出会う前の二人 前章

 暗い部屋に眩しく景色を写す画面が二つ

睨みながらブツブツ会話している女性は

コントローラーから振動が起こると残念そうに

声を抑え叫んだ。

「あと一発で勝てたのにねぇ」

 画面の中では文章がどんどん表示され

励ましの声や優しい罵倒など様々で

その中には金額のような表示と特別な枠を纏うチャットもあった。

「あっ! そうだった・・・・・・」

 電子時計の灯を確かめながら

画面前のマイクに向かって謝辞を漏らす。

「配信はここまでにしていいかな? 私ちょっと明日は

外せない用があるんだよねぇ」

 チャットには「お疲れさまです」や「おやすみ」などの

労いと共に決まり文句のような挨拶を残していく。

 あくびをしながら書斎のようなデスクのパソコンに

目をやりながら冷蔵庫へと向かう。

「疲れた時はやっぱりピーチの炭酸よねぇ」

 取り出したペットボトルには可愛らしいマスコットと

アルファベットでRAINとデカデカ表記が目印で

有名な飲料メーカーの温故知新な商品だと人気がある。

 ゴクゴクと喉を鳴らしながら腰に手を当てた仁王立ちで

風呂上がりの様に飲み干した。

「ぷはぁっ! 染み渡るわねぇっ!」

 CMに出演していてもおかしくないモデル体型に

長いサラサラとした黒髪と整った顔立ちで

格好はニットにパーカーでチャックを開けていた。

 男性なら目を引く膨らみが少し強調されており

上品ながら艶やかなお姉さんは仕事モードに移行する。

 配信業は趣味という形だが本業並みに稼ぎがあるために

むしろ今からが趣味ではと思うことなどは遙か昔だ。

 パーカーの前を締めてメガネをポッケから取り出し

パソコンを起動するが電源が入らない。

「あれ? どうしたの? 拗ねちゃったの?」

 目の前の機械に甘い声で動くように促しながら気づく

バッテリーが空なのだから動かないのは当たり前で

充電には時間がすごく掛かるし

食事中に動かすことが

ナイーブ過ぎる一昔前のデバイスには荷が重すぎる。

「眠れってことか・・・・・・」

 ベッドまでふらふらと歩みよりながら

枕の上にある目覚まし時計を設定を確認した。

「明日の昼ご飯は何処のが良いかしら?」

 ホテルにある様な高級ベッドに沈み込み

夢の世界へとダイブする。

 暗がりに映るパソコンのロゴには

雨宮相談処あまみやそうだんしょ】と刻まれていた。

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