【改訂版】正義公記〜名門貴族に生まれたけれど、戦国大名目指します〜
持是院少納言
設定等
全篇あらすじ【2/6更新】※ネタバレ注意
【プロローグ】
斎藤大納言正義は、久々利悪五郎頼興に宴に招かれたが、それは悪五郎が自身を誘き出して殺そうとする罠であった。悪五郎は、正義の養父である斎藤道三の指示で、正義を暗殺しようとしていたのである。
しかし、斎藤正義は、悪五郎が自身を誘い殺さんとしていることを知っており、逆に悪五郎を討ち取った。
本来の歴史ならば、斎藤正義は久々利悪五郎によって暗殺されるはずであったのだ。
しかし、斎藤正義の運命は本来の歴史とは違った道へと歩み出すこととなる。
【幼少期篇】
主人公である斎藤正義は、実は21世紀の日本人の記憶を持った転生者であった。
摂家筆頭の近衞家当主である近衞稙家の庶子の多幸丸として逆行転生してしまう。
多くの公家が貧困で困窮する中、比較的マシな近衛家で幼少期の日々を過ごす。
髪置の儀を終え、祖父の近衞尚通に直談判し、商いを認めさせたり、松殿家の猶子となって継承権を手に入れる。
商いでは、初代川端道喜の義父である渡辺四郎左衛門の協力を得て進めていく。
また、松殿顕家の死によって、祖父から休日松殿家の管理を任されることとなった。
着袴の儀を終えた多幸丸は、武芸の鍛錬に勤しむ様になる。両細川の乱の影響で屋敷から出られない生活を強いられ、将来に向けて身体を鍛え、武芸を磨いていく。
その中で軍学の学者である平井宮内から講義を受ける様になる。平井宮内の伝手で京流の遣い手であり、諸国を漫遊する大林菅助を召し抱えることとなったのであった。
足利義晴の将軍就任より、京の都の治安は安定し始める。その様な中で、商いのために情報収集が必要と感じた多幸丸は、素破を雇おうと考えた。
諸国を漫遊する大林菅助に、素破の知人がいるか確認したところ、いなかったのだが、菅助は甲賀と伊賀へ赴いても良いと応える。
そして、甲賀と伊賀へ赴き、戻ってきた大林菅助は、伊賀に仕官先を求めている素破がいると報告した。
多幸丸は、その素破を雇うことを決める。大林菅助と共に京へやってきた千賀地半蔵は、多幸丸と話し合い、仕官が決まった。
その後、千賀地半蔵は服部半蔵と名を変える。そして、自身の一族とともに多幸丸のために情報収集を行うのであった。
服部一族の働きにより、収益を増やしていく多幸丸であったが、平井宮内の紹介で松永久秀を召し抱えることとなる。能力は発展途上であるものの、優れた素質を持つ松永久秀は多幸丸の家臣として馴染んでいく。
そんな中、松永久秀の弟である松永甚助を推挙され、側仕えとして召し抱えることとなった。同年代の家臣を加えたことで、多幸丸の生活はより円滑になっていく。
そんなある日、京の都に強い剣客が現れたと噂になる。多幸丸は大林菅助を向かわせ、件の剣客を招いたところ、その人物は後に戦国時代の剣聖である塚原卜伝であった。
多幸丸は、大林菅助と試合をして勝ったと言う塚原卜伝を旧松殿家の客として迎えることにする。多幸丸は塚原卜伝からも剣術の指導を受ける様になったのであった。
祖父から贈られた大鷹で鷹狩を行ったり、服部一族に黒色火薬を作らせるなどの日々を送る。
その様な中、祖母の維子によって、公家文化の最高権威である三條西実隆に師事することとなった。加えて、公家社会の文化人と名高い祖父の近衞尚通からも学問の教育を受ける。
武芸の鍛錬の時間が減り、多幸丸は鬱屈とした日々を過ごすしていた。その様な中、明石正風の紹介で黒田重隆が仕官する。
或る日、祖父の御供で建仁寺へと赴く。そこでは、駿河国から修行のためにやって来ていた後の今川義元と太原雪斎を紹介される。今川義元と交流を深める機会となり、度々訪問することとなるのであった。
新たな出来事を迎えていく中で、服部一族を含めた素破の不満が高まっていると、服部半蔵から告げれる。多幸丸は素破たちを組織化し、機関(からくり)衆とし、身分と待遇を保障したことで、一件落着させた。
多幸丸は河原者との伝手を求めて、後の武野紹鷗である武野新五郎と接触する。三條西実隆と引き合わせることを条件に、河原者たちと会ったのであった。
家臣の松永久秀と黒田重隆に数学的素養を身に付けさせるべく、陰陽師の勘解由小路在富や算博士の大宮伊治と接触し、算道の教育を了承させる。
多幸丸と交流を深めていた今川義元と太原雪斎であったが、駿河国にいる父の今川氏親の容態が悪化しているため、急遽帰国することとなる。多幸丸は、今川義元と暫しの別れをするのであった。
後柏原天皇の崩御、今川氏親の死去と言った訃報が届く中、細川高国の馬廻りである香西元盛が上意討ちされる。この上意討ちは、細川尹賢の讒言と捏造によるものだった。
香西元盛の兄弟である波多野元清と柳本賢治は怒り狂う。これが新たに畿内に動乱を齎すこととなる。
その様な中で、多幸丸はいつも通り三條西家を訪問していた。しかし、そこで一人の公家と遭遇する。その公家の正体は、近衞家の政敵である九條家の九條稙通であった。
多幸丸は九條稙通とトラブルになり、殴り掛かってきた稙通を投げ飛ばしてしまう。三條西実隆によって、その場は収まるものの、九條稙通との間に悪縁が出来てしまったのであった。
香西元盛を殺された兄弟の波多野元清と柳本賢治が、丹波国で蜂起する。それに伴い、四国の細川六郎の軍勢も畿内へと上陸した。
桂川原の戦いで、細川高国の軍勢は敗北してしまう。柳本・三好連合軍によって京の都は陥落し、足利義晴と細川高国は近江国へと逃れた。
しかし、細川六郎方は都を占領したものの、足利義維と細川六郎のどちらも上洛することは無かったのである。そのため、都を含め畿内は落ち着きを見せることはなかった。
細川高国が近江国へ落ち延び、細川六郎方が、京の都を占領したことで、細川高国邸は公家たちの観光地と化していた。作庭を趣味とする細川高国の庭を眺めるため、多幸丸も訪れていたところ、知り合いの持明院基規と遭遇する。そこで、公家たちを紹介され、交流を持つこととなったのであった。
そこで、多幸丸は山科言継と出逢うこととなる。山科言継とは何かしらの縁を感じる出逢いとなったのであった。
土岐頼芸方の重臣である長井新左衛門尉は、土岐頼芸を守護とすべく中央政界に働き掛け様としていた。弟弟子である日運は、実家である斎藤守護代家の宗家である近衞家諸大夫斎藤家を通じて、細川高国や足利公儀と関わりのある近衞家に接触する。
近衞家と土岐頼芸方の交渉によって、多幸丸は長井新左衛門尉の嫡男である長井新九郎、後の斎藤道三の養子となることが決まった。加えて、美濃国人として知行を与えられるとともに、東美濃にある近衞家の荘園の遠山庄を取り戻す支援の約束を取り付ける。
また、近衞家と長井新左衛門尉の密約で、斎藤道三の跡継ぎは多幸丸とし、多幸丸が当主となったならば、近衞家の所属に戻り、長井新左衛門尉家は近衞家の分家となることが約束されたのであった。
足利義晴方と足利義維方の争いは決着すること無く、膠着状態となる。足利義晴は各地の諸大名に御内書を発給することで、自身が正統な公方であることを主張し続けていた。
足利義維は、朝廷から左馬頭に任ぜられたものの、一向に上洛する気配を見せず、征夷大将軍に任官されることは無かった。しかし、左馬頭になったことで、堺公方と呼ばれる様になる。
足利義維が上洛しないことで、都の治安は悪化の一途を辿っていた。都の公家たちの間では、足利義維の出自まで疑われる様になり、足利義晴こそ正統な公方であると見做される様になっていく。
その様な状況の中で、多幸丸は父と祖父から、長井新九郎の養子となることを告げられる。多幸丸は、旧松殿家の屋敷にいる家臣たちに説明し、美濃国へ赴く準備を始めるのであった。
足利義晴の御内書発給は功を奏し、越前国の朝倉氏の協力を得ることとなる。朝倉宗滴率いる朝倉軍と六角定頼率いる六角軍を迎えた足利義晴方は京の都を取り戻すべく、上洛を開始した。
手薄であった都を奪還し、上洛を果たした足利義晴は朝廷や公家たちの歓迎を受ける。
公方の帰洛で治安が回復しつつある中、近衞家の屋敷で、叔父とともに鷹の世話をする多幸丸の元へ一人の人物が現れたのだ。
老人の正体は、越前国の実質的当主である朝倉宗滴であった。鷹に目の無い朝倉宗滴は、近衞尚通や叔父を含めて多幸丸とともに鷹について語り合う。多幸丸は朝倉宗滴と知己を得て、交流を深めたのであった。
多幸丸は京の都の治安が一時的に回復している間に、都で交流のあった人々に別れを告げていた。その様な中で、今生の別れとなるかもしれない三條西実隆を近衞家の屋敷に招き、茶席を設ける。同じく今生の別れとなるかもしれない祖父も同席した中で、多幸丸は抹茶ラ・テを出す。嘗て朝廷や公家たちに愛された牛乳を用いた抹茶ラ・テに、三條西実隆や祖父は感激したのであった。
朝倉宗滴が何度か近衞家を訪れるなど、一時的に都の治安は安定していたものの、柳本賢治、三好元長、畠山義堯など細川六郎方の軍勢が入洛したことで、再び両勢力の緊張が増す。洛中では両勢力の戦闘が、散発的に勃発してはいたものの、本格的な戦闘には至ってはいなかった。
しかし、都に両勢力の多くの武士たちが集結したことで、都の治安は一気に悪化し、牢人や武士たちによる略奪が洛中で頻発する様になる。
その様な中で、都では両勢力が和睦交渉を行っているとの噂が流れる様になった。その噂と共に、両勢力の散発的な戦闘は落ち着きを見せる様になる。
一時的に両勢力の活動が落ち着いた隙に、多幸丸は比叡山延暦寺へと旅立つことが決まったのであった。
【美濃入国篇】
京の都を旅立った多幸丸は、長井新左衛門尉が送り込んだ瀬田左京とともに、比叡山延暦寺の門前町である坂本を目指す。
道中、大いに繁栄する山科本願寺で、戦国時代の名医となる若き曲直瀬道三と出逢ったのであった。
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