群像

春は、底無し

闇深い夜に

ちりあくたの人間として

めしをしかける


午後十時

ここは光の滲む部屋

今日には今日の

明日には明日の寂しさを抱えて

なんとなく

電気を灯けてみる


繰り返し 繰り返し

灯けて 灯けて


夜を照らして

たまに 翳をおもって


ちいさな部屋の

いくぶん煩いともり

そのしたで食事をする


午後十時

春は、底無し


からだのけだるさ

空気のおもさ

三月のかおり

アスファルトのぬくみ


死なないだけの

生活に 単独者は

神の根深さを知り

季節のむなしさを覚える


食事に

脆弱な信仰をみいだしたとき

わたしはおそらく

群像に熔ける

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